第4話 拠点
ゴーレムを導入したことで地下室は速やかに拡張されていった。あまりにも手軽に拡張できるものだから、調子に乗って一部屋だった地下室を二部屋にしてしまった。まあ作ってしまったものはしょうがない。一室はあのレシピで作ったものを置く場所にするか。
「さてそれじゃあ部屋もできたことだし、あのレシピ――『魔導核』を作ってみるか」
レシピからじゃあ必要な材料と大体の大きさしかわからなかった。しかし大体は名前から推測できる、それこそゴーレムなんかはわかりやすい。だからこの『魔導核』も魔法系の核、例えばゴーレムの核として使えて、性能が向上するんじゃないかと思っている。
そうは思っているが、やっぱり不安だ。これで俺には使えない、魔法の杖の触媒になるとかだとかなりの量の素材が無駄になる。流石に大きさ的に違うと思うが。
「それにしても『魔法核』じゃなくて『魔導核』なんだよな」
俺は他に魔導と付く名前のアイテムは知らない。『魔法核』ならどっかのトップ探索者が見つけて、魔法の杖に使ったとか聞いた。他にも魔法を銃弾のように発射できる『魔法銃』が海外で発見されたとか。
「……ああもう、これを作るために頑張ったんだろ俺!」
そう自分に言って活を入れる。今更臆して作るのを止めたとかはしない! それにここで作らなくて死んだら、悔しすぎる。
「よし作るぞ!」
覚悟を決めて、この日のために買い集めた大量の魔石を作ったばかりの部屋に持ってくる。現在の最高ランクのランク3は買えなかったが、その分ランク1や2は俺が探索者組合に所属してたのもあって割引で買えた。
「レシピには魔石が必要とあったが、どれくらい必要なのかは書いてなかった。だけどこれだけあれば作れるだろう……作れるよな?」
だいたい1000個ちょいか? 流石に1cmの魔石といえど、これだけ集まって山になっているのは壮観だ。さすがにこれで足りないなんてことはないと願いたい。
「『レシピ錬金』!」
錬金を発動してレシピ『魔導核』を選択すると、グッと魔力が引き出されて魔石の山の下に魔法陣が出来上がる。流石にこんなに魔力を一度に使ったことはないからつらい!
肩で息をしながら魔石の山を見ていると光に包まれていき、圧縮されていく。そうして俺の腰ほどの大きさ、だいたい1mくらいか? それぐらいの大きさに縮まった。
「あれ? レシピを取得したときはたしか5~10mくらいになるとかだったはずなのに……。もしかして記憶違いしていた?」
だとしたら恥ずかしい。その大きさを想定して部屋を作ったのに、実際は必要なかったとか。
「いや、広げたことで過ごしやすくなったからな。別に問題はないな、うん」
そう自己弁護をすることで落ち着く。それにしても結局これは何に使うんだろうか? そんなことを思いつつ、触ってみると頭に情報が流れてきた。
「うおっ! なんだこれ!」
情報の濁流が流れてくるが、不思議と頭が痛むことなく1時間くらいの間しっかりと理解させられた。
「……つまりこれはジョブ専用、しかも魔導師や錬金術師等の上位魔法系ジョブ専用のアイテムってことか」
情報の流し込みが終わると、しっかりこの『魔導核』について復習も兼ねて思い出している。俺は説明書とかはしっかり読むタイプだ。それに間違って壊したらシャレにならない。
そして復習が進むにつれて、俺の興奮は高まり、ついには抑えられなくなった。
「つまりこれって錬金術師の魔力バッテリーってことだろ! しかも自動で魔力は回復するし、周囲を魔力で侵食することで陣地化できるとか!」
早速とばかりに地下室全体を陣地化して、拠点にする。壁を『簡易錬金』スキルを使って自分の魔力を流して固めたおかげで、スムーズに陣地化できた。土で埋まってるところもできそうだが、掘ってから陣地化した方が消費魔力は少なくすむ。
「よしこれでしっかりと自分の拠点ができたな。しかもまさかダンジョンの発生を防いでくれるとか思いもしなかったが」
正確に言えばこの拠点内では、転移等の空間に作用するのを防ぐ。ダンジョンは空間に発生しているようで、ある程度の空間があればいいみたいで俺の地下室でも発生する可能性はあったのだ。
「もしも寝ている間に発生して、寝首をかかれるとかたまったものじゃないな」
しかもこの事実を知らなかったから、対策もできないという。まあそんなことが起こる確率は低いだろうが、それでもしっかりと対策できたのは大きい。
「よし次は魔道具を登録して、魔力を供給させるか」
今までは魔力を貯めて供給していたが、これからはこの『魔導核』がしてくれる。しかも消費より生成のほうが多いから、半永久的に使える。これで消費に怯えなくて済む!
「それにしてもまさか本当にこれ一つでだいたいの問題が解決できるとはな」
例えば資源問題だが『魔導核』の魔力を使って『鉱物生成』スキルを使うことで大量に、とまではいかないが少しの量を毎日作れるようになった。
他にも『魔導核』を作った影響か、『魔石生成』のスキルを覚えた。これで無属性の魔石はもちろん希少な属性付きの魔石も生成できるようになった。
「これなら光の魔道具を作って、農業用の空間にもできそうだ」
もちろん種なんかはないので見つけてくる必要はあるが、それさえあれば新鮮な野菜を食べることができる。今はまだ保存食でも大丈夫だが、そのうち新鮮なものが恋しくなるかもしれない。
「いまいち食に一喜一憂してる自分が想像できないけど、まあ作れて損はないからな」
もちろん良いことばかりではなく、悪いことと言えば語弊があるが問題がある。この『魔導核』だが実はかなり小さい。というのも本来だともっと大きいのだが、魔石の量が少なかったみたいでこんな小さくなったようだ。
もちろん後からでも大きくなれるようで、魔石を食わせれば大きくなれるようだ。といっても『魔石生成』だけで賄うとすると、今の状態から10年くらいかけて漸く本来の状態になるようだ。
「まさかまだ機能があるとは思わなかったな。今でも十分凄いのに」
そんなわけで今後の目標は『魔導核』の機能の開放を目指していく。
「そうなるとゴーレムを量産して、魔石の確保をしていかないとな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます