第一章 呪われた女王と時空(とき)の神
第2話
むかしむかし、あるところの国を治める女王がいました。
その女王は慈悲深く、多くの民に慕われていました。
しかし、ある式典の日。何処からか迷い込んだ蛇を殺したことですべてが狂いだしました。
その蛇は国を護り続ける神のつかいだったのです。
神は言いました。
『我が眷属を殺した罰として、お前の子孫は永劫に苦しむことになるだろう。そして、その身は不老不死となり慕ってきた民に石を投げられる呪いを。愚かな民たちには他の国へ移住できなくなる呪いをかけよう』
そうして、以来その国の人々は移住もできず、永遠にその国で生涯を閉じなければならなくなりました。
「・・・・神の罰は今でも続いています。それは先々代の女王が犯した罪の証なのです、おしまい。」
と優しい声色で告げると膝で眠る我が子を撫でた。
「おかあさま、本当にその昔話はあったことなの?」
と銀色の髪で藍色の瞳の少女が尋ねる。
「ええ、そうですよ。アネイスト、この国は先々代の呪いがまだ続いているのです。」
と悲し気に女性が告げる。
「母上、そのようなおとぎ話に心を痛めずとも私が成人をしたら立派に母上の跡を継いで国を治める王になります。」
とはちみつ色の長い髪を三つ編みに碧の眼をもつ少年がはっきりという。
「ふふ、ありがとう。エレインはとても優しい子ね。でも、静かにしないとリレイヌが起きちゃうわ。」
と膝で抱いている少女を撫でながら苦笑した。
「大好きよ。私の可愛い子供たち・・・どうか、あなた達が立派な大人になるまで見守らせてちょうだいね・・・?」
そういって両手で大きな我が子を抱きしめて時代の女王『セレイス・ジョセフィルド・メイデント』は微笑むのだった。
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それは、世界の終焉に響く詩
~第一章 呪われた女王と時空(とき)の神~
異世界、セブリファスタ。
魔法や化学は普通に存在している世界。
6つの大陸と周辺の海があり、7つの国としてそれぞれ独立している。
「滅びの国 クォレイド」
「弱小の国 ヴィオレイズ」
「正義の国 ジャロンディア」
「花の国 ティフォレイ」
「雪の国 コールド・ゴルドラム」
「平和の国 ラフォネル」
「海の国 トレイオネス」
滅びの国を除いた国々はそれぞれに治めるものたちがいた。
それらは皇族であったり、民主主義の政府であったりさまざまである。
それぞれの思想、思惑。様々なものが交差しながらも平和は保たれているはずだった。
150年前に、平和の国ラフォネルで起きた事件がなければ
【皇歴1920年~ラフォネル国境付近】
「いいか!持ちこたえろ、援軍はすぐそこまできている!!」
大きくさく裂する爆音。
ラフォネルの国軍は何度目かわからない反乱軍による襲撃をこの場所で食い止めていた。
もとより、ラフォネルは平和の国であり軍隊は基本的には存在しないものだった。
だが、150年前。先々代の女王が神の怒りを買い、多くの民が国境を超えることができなくなった。
理由は物理的な3重からなる巨大な壁と上空には魔法障壁がそこには築かれているのだ。
これらを護るために女王は国軍を募り、そして配置した。
それに怒りを覚えた国民の一部が暴徒化し、こうして50年以上もの間国境で小競り合いを起こしているのだ。
「いいか、女王陛下の名の下にわが軍に撤退はない!賊どもを全員捕らえるまでこの戦いは終わらないとしれ!!」
「イエス、サー!!」
銃弾が飛び交い、砲撃が止まない。
王都の中心部にいる人々は此処の地獄を知らぬまま生きている。
「おい、後方の支援はまだかよ!」
と反乱軍も焦り始める頃。
「精霊波(アジェクト・シール)!!」
甲高い声が響くと国軍の一部が吹っ飛んでいた。
「ひょう、待ってたぜ【メディラ】様のお通りだ!!」
と歓喜に沸く反乱軍
対して、国軍は混乱しはじめる。
「なんだ、なにが起きている!?」
「わかりません、突然突風が吹いてきて・・・!」
「まさか、やつら・・・本隊を呼んだのか!?」
「いえ、そのようなそぶりはなにも・・・!」
「・・・一体何が起きているのですか?」
と一人の兵士が尋ねる。
「お前たちは初めてだったな。反乱軍どもは20年前から中心となるやつらに魔法使いが加わったという。【メディラ】というのは聞いているがそれはどうにも偽名のようでな。
・・・というのもメディラはそもそも神話のおとぎ話に出てくる疾風を司る神の名のことで・・・。」
と説明をする隣で電報係が叫ぶ
「前方右翼で敵中心隊と遭遇とのこと!敵は・・・・ドラオン!戦いの神を名乗るものです!!」
「ぬぅ・・・・」
「神って、そんなに名乗るものなのか?」
「偽名だって言っただろ。あとは【冥王】ベギス、【蛇王】レガイアとか名乗ってる連中もいるそうだ。」
「なるほど・・・。」
「おい、何を呆けている!お前たちも前線への支援を送るんだ!!」
と司令官からの怒号が飛び慌てて二人の兵士も本部を飛び出していった。
「まったく、使えんやつらが部下だと困る。」
「たしかに、そして使えない上司はもっと困ると思わないか?」
「何っ・・・・!?」
振り返ると国王軍の鎧を着た2人がそこに立っている。
「なんだと!?貴様ら、所属と名前を・・・・。」
「名前?名前ならお前に名乗るほどのものじゃねぇよ。」
と一人が兜を外す。あらわになったのはオレンジ色の短髪。そして青い瞳。
「・・・おま・・・え、は。」
ガチガチと歯を恐怖で震わせ、絶望した顔になる司令官。
「ああ、そうさ。お前たちが恐怖する【冥王】ベギスだ。」
そう言って司令官を手に持っていた銃で撃ちぬいた。
「よし、仕事は終わりだ。戻るぞ、レガイア。」
「・・・はい、そうですね。」
とレガイアと呼ばれたもう一人は冥王に続く
「・・・あの司令官、お前の叔父だったんだって?」
「昔の、話です。今は違います。」
「そーかい・・・じゃあ、目的は達成したってことでいいのかな?」
「はい。・・・・父と母の敵は討つことができました。」
「・・・そう、か。じゃあ今夜は宴だな。」
「いえ、そういうことは明日の潜入組が帰ってきてからにしてください。」
ぴしゃりと言われて思わず冥府の王は苦笑する。
その顔は先ほどとは打って変わり、年相応の少年の顔だった。
【ラフォネル国王都『ミラフィレス城』】
王の間で、伝令係をしていた魔術師が悲鳴を上げて倒れた。
彼女は『遠見』の魔術で国境の戦線を中継してみていたのだ。
そして、今しがた総司令官であった男が撃たれた場面を見て失神してしまった。
「・・・・下がらせなさい。その子を休ませるように。」
と王座に座った女王『セレイス・ジョセフィルド・メイデント』は魔術師を近衛兵に任せて下がらせる。
「いかがいたしますか、陛下。」
と傍に控えていた初老の執事が声をかける。
遠見の魔術はまだ比較的歴史が浅く、精度もよくない。故に『見る』ことはできても『聞く』ことはかなわない。故に何時、その国軍に反乱軍が紛れ込んでいたのか。そして彼らの目的はなんなのかそれは憶測でしか判断ができない状況であった。
「今は、傷ついた兵の治療と亡くなった兵士たちの弔いの準備もしなければいけません。
しかし、今までの周期から【冥王】が出てきた戦いからひと月ほどは反乱軍も大きな戦はしてこないでしょう。明日には王都から新たな兵士を派遣し、今回戦ってもらったもの達に前線を交代するように伝えなさい。」
「御意。」
そう言って下がる執事。
この国は現在までは【王族制】であり、すべての権限は女王が持つこととなっている。
何故女王なのか、150年前に起きた先々代の女王による【神の眷属殺し】の事件によってその地位と汚名は全て女王が背負うことになっているのだ。
夫をとっても何の因果か歴代の女王の伴侶は女王よりも先に死んでいる。
セレイスの夫も例外ではなく8年前に流行り病で亡くなっていた。
彼女に残されたのは三人の子供たち。
第一皇子のエレイン・ジョセフィルド・メイデント
第一皇女のアネイスト・ジョセフィルド・メイデント
第二皇女のリレイヌ・ジョセフィルド・メイデント
エレインは特に今年20歳となっていて貴族の中には彼に取り入って政権を手にしようとしている連中もいると聞く。
アネイストは18歳、リレイヌは13歳とそれぞれ大きくなりつつある。
故に、彼女はどうしてもまだ自らの地位を誰かに託すことはできなかった。
まだ親として子を守りたい気持ちが何よりも勝っていたからだった。
反乱軍の噂は耳にする。彼らは王政と滅ぼして【民主主義】を掲げようとしているのだと
たしかにそれもいいのかもしれない。だが、今現状では自分が抑止力として国のバランスを辛うじて保っているようなものだと彼女は自負していた。
何より、民主主義となった結果・・・自身のみならまだしも可愛い子供たちの身になにかあってはいけないと頷くことはできなかった。
「まだ、あの子たちを護る義務が私には残っている・・・。そのためには、もう少しだけ時間が必要なのよ。」
と彼女はそう呟いた。
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