第36話

くすっと笑う声が聞こえてハッとした。なに、熱くなってるのわたし。


お兄さんを控えめに見つめると、なぜか優しい表情をして笑っている。


上品にストローを使って飲み物を飲む、喉仏が上下して少し色っぽいと思った。今度アイの喉仏も見てみよう。たぶんわたしが凝視したら顔を真っ赤にして、やめて、って口をパクパクさせて言うはずだ。


アイを想像しながらお兄さんをじっと見つめた、そうしたら優しい瞳に見つめ返された。同じ花園家の男の人なのにドキドキするのは藍佑だけだよ。




「藍佑がウタちゃんを好きになった理由が分かった気がする」


「っ、」




何で知ってるんですか、なんて聞かなくても分かる。

だって、世間知らずのお坊ちゃまは、何も隠そうとしないんだもん。




「たぶん、どんな出会い方だったとしても藍佑はウタちゃんのこと好きになってたと思う」




優しいお兄さんの導き出した答えに泣きたくなった。優しいところはアイと変わらない。




「そんなこと、ないです」


「ウタちゃんは藍佑のこと好き?」


「……大嫌いです」




好きになんかなってやりません。


唇を噛む、顔に熱が集中する、ハートが痺れる。一気にいろんなことが起こってややこしくなった。


それなのにアイがまた浮かんでくるからもっとややこしい。




「その答え、正解だと思う」




藍佑の気持ちだけじゃなく、わたしの気持ちも見透かすお兄さんにニコリと笑って返された。


わたしがアイのことを大嫌いじゃなくなるのは、世界が終わるその時だ。

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