第35話

わたしはアイの声が聞くことが出来る。だけどそれはわたしが作りだしたニセモノの藍佑の声。妄想でしか無いの。


ホンモノを聞いたことが無いわたしはお兄さんのように、アイが楽しそうに喋っている姿を追いかけることは出来ない、ニセモノに翻弄されることしか出来ない。



どうして、どうして、どうして。


もっと早く出会ってたら、アイの声を聞くことが出来たのに。だけどもしアイが声を失う前に出会っていたら、アイはわたしのこと好きになってくれた?


アイの声を聞いたことがある、会話したことがあるお兄さんが途端に憎らしくなった。でもそれは一瞬で消えて今度は悲しくなる。




「もし、わたしと一緒にいる時にアイが声を取り戻したとしても、それはわたしのお陰なんかじゃありません」


「どうして?」


「だって、アイの声はアイの声、ですよ」




ホンモノを知らないわたしは取り戻してあげることは出来ないんです、だってきっとどこかで間違えてきちゃう。


出来るものなら中学3年生の夏に戻ってアイの声を取り戻してきてあげたい。


代わりにわたしの声を差し出したっていい……やっぱりアイと会話できなくなるからそれは嫌だけど。




「最後に踏ん張るのはアイ自身だから、背中を押してあげることも、支えてあげることも出来るけど取り戻せるのはアイだけです」




だから、もしわたしといる時に声を取り戻したとしてもわたしのお陰なんかじゃない。


アイが頑張ったから。

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