第32話

「ちょっと、お兄ちゃんに付きまとわないでっ!」


生徒会室に入るなり、奈緒ちゃんに責められる。


「やめろ! 付きまとってるのは奈緒の方だろ」


「お兄ちゃん……」


会長の言葉にショックを受けて、シュンとなった奈緒ちゃん。


「とりあえず、ここに座って」


彼女を椅子に座らせて、会長はテーブルを挟んだ向かいの席に私と並んで腰を下ろした。


「どうして、この人と一緒なの?」


泣きそうな顔で、奈緒ちゃんが会長に尋ねる。


「俺の実の父親と、かすみちゃんのお父さんが友人だったんだ。小さい頃、家族同士で何度も会って仲良くしてたのを、最近思い出したよ。だから、これからもかすみちゃんとは仲良くしたいと思ってる」


「そんなの、嫌っ」


「奈緒が嫌でも、関係ない。これは俺の意思だから」


「どうして? 今までは何でも奈緒の言うこと聞いてくれたのにっ」


「それは、亡くなった一樹兄さんの代わりになろうって、頑張ってきたから。頭が良くて、運動も得意で、年の離れた妹を可愛がる優しいお兄ちゃん、そうなろうと必死だったよ」


「そうだよっ。だって、一樹兄ちゃんが死んじゃったのは、お兄ちゃんのせいなんだから!」


ええっ、どういうこと!?

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