第27話

「ご両親の葬儀で会ったのが最後だったな。元気にしているか心配してたんだよ。確か、信也のいとこの家に引き取られたんだよね」


「はい、今まで本当の息子のように育ててもらいました」


「そうか、だったらよかった。赤の他人に育てられるより親族の方がいいものな。お金がいくらあっても、身内の愛情には代えられない」


「はい……?」


「資産はきちんと管理してもらってるのかい?」


「資産、ですか?」


「ああ、君のお母さんは資産家の一人娘で、かなりの遺産を相続していたんだ」


お父さんの話を聞いて、言葉も出ない様子の会長は顔をこわばらせている。


「もしかして、知らなかったのかい?」


ゆっくりと頷く会長。


思ってもみない展開に、みんな深刻そうな顔で聞き入っている。


「いや、こんな時にする話じゃないな。改めて相談に乗るから、今夜は花火とバーベキューを楽しもう」


お父さんが申し訳なさそうに、会長の肩を叩く。


「そ、そうよ。やり手弁護士の安西先生に任せれば大丈夫だから。ほら、早く食べないと焦げるわよ」


おばさんがそう言って、お肉と野菜を山盛りにのせたお皿を会長に差し出した。



それぞれ気まずさは隠せなかったけど、気持ちを切り替えるように、ぎこちない会話を交わしながら食べ進める。


しばらくしてドーンと音を響かせて花火が上がった。みんなホッとしたように、一斉に夜空を見上げた。



それから、夏休みの間、受験生でもある会長は忙しそうで、連絡を取る回数も減っていった。

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