side升
第12話
バンドは、最後に残された音源のリリースに向けて動いていた。
それが終わったら、プロデュース集団と共に解散する予定だった。
藤「今日ってスタジオ?」
升「うん」
藤「俺もついてっていい?」
増「いいけど、意見とか言っても伝わらないよね」
藤「おまえらが通訳してくれりゃいーじゃん」
直『すげぇ、どこの王様だよ(笑)』
とんだVIPもあったものだが、とりあえず出かけることにする。
―――藤原がこの姿で現れてから、3日目の朝が来た。
ヒロの車に4人で乗り込んだ。
助手席にすっぽり収まったチャマは、さっきから生あくびを連発している。
増「ところでさぁ」
直『ん~?』
増「なんか、この間から、なし崩しで秀ちゃんちに4人で居るけど…いいの?」
升「俺は別に」
藤「俺も別に」
増「おまえには聞いてないって(笑)」
直『秀ちゃんがイイなら、いーんじゃん』
まぁ、俺は構わない。
一風変わった合宿みたいな感じだし、ヒロとチャマは適当に自分の家に戻ったりもするし。
ただ…
藤「で、歌はどうしてんの?ギターはヒロでいいとしても」
増「仮歌入れてたでしょ。あれ使ってる」
藤「え!マジで?」
直『大マジ。何かまずい?』
藤「だってあれ、かなり粗くねぇか」
直『そこがエンジニアの腕の見せどころっしょ』
藤「う~~ん」
こいつは、この後どうなるんだろう。
升「しかしまぁ、曲もなぁ…。正直、完成させたいような、させたくないような…」
増「ラジオに来るメールとかもね、そんな感じ。最初は悲しいとか信じられないって内容ばっかりだったけど…今は、新曲が楽しみだけど聴きたくない、みたいな」
ちらっと横に目をやったら、真顔で見つめ返された。
まずい、言っても仕方ないことをよりによって本人に言ってしまった。
何を言われるか…と思ったら。
藤「隠しはどうすんの?」
升「…おまえ、心配するのはそこなの?」
前の席の2人からも、くすくす笑う声が聞こえてきた。
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