side増
第11話
秀ちゃんの後に続いて室内へ入ってきたチャマは、しばらくぼーっとしていた。
この部屋にいる“3人”が、ちゃんと見えてるのかな。見えてないのかな。何考えてるのかな。
緊張をつのらせる俺と秀ちゃんをよそに、藤原がチャマに近づく。
藤「チャマ」
直『…ふじ…くん?』
見えていたらしい。
ただ、感情が読めない表情だった。
直『藤くん?藤くんなの?』
藤「藤原です」
直『…どうして?生きてるはずないよね?』
藤「幽霊って、信じる?」
直『………』
静かだった。不気味なほど、チャマは騒がなかった。
叫ぶなり泣くなり、何か感情の表出があっても良いような気がするんだけど。
次の瞬間、チャマが藤原に抱きついた。
直『……!!』
全身すり抜けて、思いっきり床に叩き付けられる格好になった。
藤原が慌てて気遣う。
藤「大丈夫か?言ってなくてごめん、俺、身体が…」
直『幽霊、か。本当にそういうことなんだ』
藤「…わかってくれた?」
直『うん。でも藤くんは藤くんでしょ』
藤「あぁ…けど、おまえら3人以外には見えないみたいなんだ、俺」
直『あ、そうなの?そっか…』
驚きは勿論あっただろう。
でも全体的にはすんなり受け入れているように見えた。
悲しくないんだろうか。
怖くないんだろうか。
ヘタしたら、“幽霊がどうのこうの”という状況を受け入れられなくて、自分の殻に閉じこもってしまうかもしれないと思っていたのに。
直『本当に俺たちだけ?動物にはわかるとか、そういうのは?』
藤「あー、それやってみたけどダメだった」
直『そうなの?』
藤「少なくとも、猫はアウト」
直『ありゃ。その姿の藤くんだったら、普通に小鳥とかと友達になってそうなのに』
藤「世の中そう上手くはいきませんって」
あれ、ずいぶん話が弾んでるな。
心配するほどのこともなかったかな。
秀ちゃんが俺の方を見て、ちょっと笑う。
俺も少し肩の力を抜いて、微笑み返す。
―――こうして4人で過ごせるなら、身体の有無なんて関係ないのかもね。
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