第3話

とりあえず、動いてみた。歩くのは普通に出来るらしい。

ただ、足で地面を踏みつけてみても、どうもフワフワと現実味がない気がする。


そういえば幽霊って、足がないんじゃなかったっけ?



藤「あるな…」



影もないとかいう噂だけど…雨だからわからん。

あと、そうだそうだ。霊とか臨死体験とかの定番っつったら、あれだ。



藤「よっ」



思いっきりジャンプしてみる。

空を飛ぶ、という意思のもとに。



藤「…!!」



飛べた。

体重がなくなるみたいな感覚は特にないけど、本当にあっという間に、その辺の屋根とか電柱とかが眼下に広がった。


すっげー…

タケコプターってこんな感じなのかね?





下の葬儀会場を見渡すと、ちらほら知った顔を見つけることが出来た。


お、高ちゅー発見。

なじみの制作スタッフに、事務所のお偉方に、知り合いのミュージシャン…、そして。



藤「あ」



いた。

あいつらが、端っこの方に固まってるのが見えた。





せっかく浮くことが出来たけれど、まぁこの状態でも特にメリットはないし、下に降りる。


ふと見たら、天気をものともせず道を歩く猫がいた。

ちょっと話しかけてみる。



藤「よぅ。おまえ、どっか雨の当たらないとこ行けよ。風邪ひくぞ?」


―――………。



完全無視。ダメだ。動物なら気づいてくれるとか、そういう甘いことはなかったらしい。





人混みをぬって、大本命に近づいた。

話しかけようとして、しばらく躊躇する。


これだけ大勢の人がいながら、俺に気づく人はまだいない。


やっぱり怖い。

俺が見えるだろうか。気づいてくれなかったらどうしよう。

おまえらにまで拒否られたら、俺…



升「うわっ」



その時だった。

秀ちゃんがこっちを見て、何とも名状しがたい声をあげた。



藤「…!!おまえ、俺のこと見える?」

升「なっ…ふじっ、藤原!?なん、どうして!?おまえ、だって、し、死んっ…」



とんでもない取り乱しようだった。

そのすぐ隣で、ヒロもうつろな視線を向けてくる。



増「ひっ」



幽霊でも見たかのような悲鳴…というのは、全くその通りで逆に笑えないよなぁ。

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