第18話

増「…俺が入り込む余地はないかな」

直『な…なに、言ってんの…?』


増「俺だって昔からおまえのこと見てた。ずっと友達だったけど、おまえが男と付き合ってるって分かって、俺にも望みがあるのかなって密かに期待してた」



やめろ。やめてくれ。



増「俺だって…って、思うよ。好きなんだもん。藤原は無理でも、せめて秀ちゃんの位置に行ければいいのに」

直『無理だよっ…俺はっ…おまえのこと、好きじゃねぇもん…!!』



絞り出すような声でそう言ったら、また涙が出てきた。それを掠めるように、頬に唇が寄せられる。



直『や…』

増「いいよ。好きじゃなくていい」

直『でもっ』

増「誰のかわりにもなれなくていい。でも聞いて」



―――俺は、チャマのことが本当に大切だから。



耳の奥でリフレインする、その言霊。

あぁもう…秀ちゃんもヒロも藤くんも、どうしてそこまで、俺なんかのために?


硬直した俺の表情を蕩かすように、ゆっくりと舌が降りてきた。

そのままキスへもつれ込む。

もう何も言い訳は出来ない。逃げようと思えば逃げられるのに、俺は全てを壊そうとしている。



増「チャマは何も悪くないから。…力、ぬいて。あいつのこと考えてればいいよ…」



泣きながらヒロに身を委ねた。

細長い指。優しくて甘い、俺をがんじがらめにする言葉。



増「悪いのは誰…?」

直『あぁっ…や、は…ぁ、あっ』



自分だと言いかけた唇が、やんわりとその手に封じられる。



増「…チャマ。ね、答えて?」

直『………っ、ぅう…』



好きだと言うくせに、俺の涙を見ても許してはくれない。俺を、ただの被害者ではいさせてくれない。

愛の言葉で俺を縛る、こいつは酷い男だ。



直『…ヒロ、ヒロがっ…おまえが悪いんだ…!』

増「うん」



哀しそうに、でもそれでいいんだと言うように、動きが速くなる。



直『あぁ、あっ…ひろぉ…』

増「違う。名前が違う」

直「え?」

増「チャマが本当にこういうことしたい相手を呼んで。じゃないと俺…ここでやめて、このまま出てくよ…?」



俺が抱かれたい相手?好きな相手の名前?

俺の本心を知りたいのは、本当はヒロ、おまえなんじゃないの…?

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