第38話 桃葉の家で情報共有
「ゆっくりしていってね〜!」
「ありがとうございます!」
挨拶を残して、桃葉のお母さんが部屋から去る。
俺たちが囲う机の上にはオレンジジュースとクッキーが置かれ、桃葉は早速それに手を出していた。
そう、俺は今桃葉の部屋の中にいる。
子供の頃はしょっちゅう来ていたが、最近はあんまり来ていなかった気がする。
前に泊まった時も別の部屋だったからな。
懐かしいような、そうでないような不思議な感じだ。
全体的に薄いピンクに装飾された部屋にはクッションが複数置かれており、全体的にもこもこしたイメージを覚える。
「美波も食べてね。滅也、あんたも仕方なく食べて良いわ」
「ありがと! いただくねー!」
「仕方なくは余計だ」
当然のようにみなみもいる。
今回はお互いに色々聞きたいこと、話したいことが多いだろうってことで、放課後にみんなで集まることにしたってわけだ。
桃葉は早速俺に疑問を投げつける。
「で、何を話したかったのかしら?」
「ああ。もっと強い魔物がいるダンジョンはねぇか?」
「……呆れた。あんた何考えてるのよ」
「滅也くん……あんなことあったばかりなのに……」
2人がジト目で俺にどんよりと言葉を返してくる。
「いいだろ。この前強い奴と戦うのは楽しいってはっきり分かったからな」
「……確かにあんた、桐島への最後の言葉で戦うの楽しかったって言ってたわね――っ! ……また変なこと思い出しちゃったじゃない……忘れなさい私の頭!」
「何やってんだお前」
「あんたのせいよ!」
自分の頭をぽかぽかと叩く桃葉。
今度はMに目覚めたのか? 変態極まれりだな。
「あはは……で強い魔物が出るダンジョンが知りたいんだっけ? うーんどうだろう……私はそこまで強い所にはいかないようにしてるから……」
「私は知ってるわよ?」
「お? 本当か?」
「ええ、色々と調べてるから」
桃葉はふふんとドヤ顔を浮かべる。どっかの童話の人物みたいに鼻が伸びてきそうな程の態度だ。
「すごいね桃葉ちゃん。覚醒してないのにそこまで調べてるなんて!」
「日頃ネットで情報収集してるのよ。情報は武器なんだからっ!」
「それで? どんなのがあるんだ?」
「うーんとね。1つは都心の方にある
「S級の魔物……!」
「うん? 強いのか?」
「強いよ! S級探索者でも苦戦する相手なんだよ! あの地龍……滅也くんは巨大トカゲって呼んでたけど……あいつよりも全然強いんだよ!」
S級探索者でも苦戦……S級探索者って……
「桐島……あいつもS級なのか?」
「そうよ。桐島才人は過去に何回もS級の魔物を倒してはいるけど手こずってる時が多かった気がするわ。結局ホーリーソードかなんかで吹き飛ばしてたことが多かったもの」
「へぇ……面白いじゃねえか」
桐島才人は強かった。暗殺者とどっちが強かったのかはよく分からんが少なくとも今まで戦った魔物とは大違い。
そいつが苦戦するほどのやつ……どんな魔物だろうなぁ。
面白くなってきやがった。
「それ以外だと富士山付近にある富士ダンジョン。桐島がS級と戦っていたのはここね。ただ300階層まで行かないと出てこないけれど」
「そこまで行くのはめんどくせぇな。もっとすぐに強い奴と戦える場所はないのか?」
「わがままね……後はまだS級は確認されていないけれど、夕刻ダンジョンはどう? 低階層で強力な魔物がじゃんじゃん出てくるからS級が出てくる可能性もあるわ。比較的最近出来たダンジョンだからまだ21階層までしか確認されていないのよ」
「あそこはボス部屋ではあったけど21階層で地龍が出てきてからありえるね」
「へ〜。じゃあそこに行ってみるか」
「あ! め、滅也くん! その件でちょっとお願いが……」
「なんだ?」
みなみがかしこまった様子で説明を始める。
この間配信をした時みなみ自身の能力が少し向上していたこと。
探索者は中々成長することがなく、これはチャンスであること。
それにより強くなれば俺たちの役に立てること。
だから良ければ一回でも良いから俺に着いて行って魔物と戦ってみたいということ。
などなどを説明された。
てか他の探索者ってあんまり成長しなかったのかよ。
「だから俺が強いって知られた時あんな騒ぎだったわけか」
「あんた無関心にも程があるわよ。あんたは強さにおいては特別な人間なんだって自覚を持ちなさいよ」
「別に俺は特別なことなんてしちゃいねぇが」
「5歳から毎日ダンジョンに潜り続けてるってだけで十分異常よ。異常者よ」
「知らねぇな」
他の奴の基準なんて知ったことじゃねえ。
「で……なんだけど。滅也くん、お願い出来ないかな?」
「別にいいぞ」
「いいの!?」
俺の答えにみなみは驚き、身を乗り出す。
「てっきり断られるかと思ってたよ……滅也くん戦闘にしか興味がないから……」
「まぁついでだからな。それに強くなれば、みなみとも戦闘を楽しめるかもしれねぇだろう? 強い奴と戦うのは楽しいからなぁ」
「……そ、そんな理由……いや、まぁありがたいんだけど……私滅也くんと戦えるようになるのかな……?」
驚きから一転、途方に暮れていたみなみだった。
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少し抜けていた文章を補填しました。
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