第9話 配信で大暴れ

「お花畑のみんなー! 今日も張り切って恵みの雨〜! ざーざー! 今回は雨が大盛況だよ! これで元気になぁれ! 水の支配者、水沢みなみだよー!」


 みなみは笑顔でドローンに目掛けて水飛沫を放つ。


 俺は今N252ダンジョンの中でみなみと一緒に配信を始めている。


 あの後LIONでみなみから連絡があり、時間と日時を指定してN252ダンジョンで落ち合うことになった。


 桃葉に押し切られ配信に参加することになったからだ。


「今日はビッグゲストがいるよ! なんとこの方が来てくれましたー!」


 みなみは両手をはためかせ俺のことを紹介する。


“みなちーの救世主だぁぁあ!”

“例のめちゃ強F級探索者”

“よく捕まえられたな”

“目つき怖ww”

“髪は染めてないけど……イカついなぁ”


 みなみの声ともに文字の羅列が空中に映し出される。


 この文字がこの配信の視聴者からのコメントであるらしい。


 例の不審機械によって上手く視界を遮らないように文字が表示されるらしいな。



 中には、



“みなちーは1人で配信する方が似合ってるとも思うけど”

“F級がそんなに強いわけないんだよなぁ”

“男はいらないんじゃないかな”

“そいつ誰? 邪魔”

“帰れよ。雑魚のくせに”


 なんてあまり好意的ではないコメントもあるようだがこれは俺の知ったことではない。


「じゃあ、挨拶よろしく!」


 みなみがこちらを見て挨拶を促す。



 しゃーねーな。



「天城滅也だ」

「滅也君だよ! よろしくねー!」


 みなみは先日俺と話していた時よりも高いテンションで話している。


 配信だからかねぇ。


「みんなも既に気づいてると思うけど、この人は私の命の恩人なんだ! あの時私を救ってくれた張本人だよ!」


“見てたぜー!”

“今話題の男だしなー”

“あの出来事はあまりにも衝撃的で忘れられない”

“正直今だに疑ってる”

“本当にF級なんか?”


「そう! エゴサしてたら滅也くんの強さを疑ってる人が沢山いたから、今日は滅也くんの強さを見せてもらう予定だよ! お楽しみに!」


 そろそろいいか? ただ突っ立ってるのも飽きてきた。

 

 痺れを切らした俺はみなみの方に顔を向け、自分の要求を口にする。


「なぁ好き勝手やっていいんだろ? ならさっさと魔物と戦いに行こうぜ」

「あ、うん! では、今からこのダンジョンに潜っていくよー!」

「じゃあ行くぞ。転移」

「え!? ひゃあ!?」


 俺に手を握られて驚いた反応を示すみなみ。


 それを意に介さず、俺は指輪を使って下の層へ瞬間移動する。


 少しの浮遊感を感じている間に俺たちは目的の階層に到着していた。


「よし、着いたな」

「あれ? ここって」

「前に会った場所だ」

「グランドドラゴンがいた場所!?」

「名前は知らんが巨大トカゲがいた階層だ」

「……」


“ええええええ”

“やりやがったなこいつ!”

“やばくない?”

“4ね4ね4ね4ね”

“でも大丈夫じゃない?”

“みなちー何かあったら許さんぞ”


「よしっ! じゃあ早速魔物をぶっ倒しに行こうじゃねえか!」

「ちょ、ちょっと待って〜!」


 俺が魔物を探しに駆けていくと慌ててみなみが追いかけてきた。

 

 魔物狩りの始まりだ!





 指輪でワープしてきた通路を抜け、少しの崖を飛び降りた先に、少し大きめの空間に出る。



 そして……そこにはすでに大きな魔物が陣取っていた。


 早速おでましだ。



「赤蜘蛛か」



 人間の体長をこえる大きさの蜘蛛。


 鎌のように鋭利な足と、所々淡い赤色の体色の蜘蛛がいた。



「ロ、ロゼスパイダー……嘘でしょ……」



“A級の魔物だと……”

“虫きめぇぇええ!!”

“やばいだろここ”

“本当に大丈夫なんだろうなァ!?”


 みなみは震えた声で赤蜘蛛を指差している。


 さーて……



ろうか!」



 俺は赤蜘蛛に向かって走り出した。


「シャアア!」


 俺を敵と認めたのか、赤蜘蛛は口から赤色の糸を吐き出しこちらを捕らえようとする。


「おせぇよ!」


 スピード重視にするためか、拡散せずに1つにまとめられた糸を横に跳ねて躱わす。


「シャアア!!」

 

 ただそれで終わらず、赤蜘蛛は躱わされた糸を口で噛みちぎり、次々と新たな糸を射出してきた。


「いいねぇ! だがそれでも当たらねぇな!」


 走るスピードは落とさず、体を自在に逸らしながら糸を避け続ける。



 そして赤蜘蛛との距離が迫ったタイミングで――

 


「ふっ!」


 俺は足に力を込め、天井近くまで飛翔。



 その後身体を操作し、赤蜘蛛に向かって急激に落下する。



 ――ドーン!



 足で踏みつけ、赤蜘蛛をぺしゃんこに潰す。



 その一発で赤蜘蛛は物言わぬ亡骸となった。


“うおおおおお!”

“やっぱこいつすげぇわ”

“A級をあっさりと……だと!?”

“滅也! 滅也!”

“震えちまったよ。やべえなアンタ”


 それから数秒で蜘蛛の死体がダンジョンに飲み込まれていき、青色の石だけが残される。



「へへっ、終わったな。次行くぞ!」

「えぇ!? ちょ、ちょっと待ってぇ〜!」

「待たねぇよ!」


“魔石回収しないの!?”

“もったいねぇぇぇえ”

“数分でダンジョンに吸収されちまうんだぞ?”

“取らないなら俺にくれ!”

 


「うぅ……勿体無いけど勝手に取るわけにはいかないし……置いてかれちゃう! 待って〜!」


 俺はまた同じように走り出し、その後にみなみが追従する。


 ダンジョン内は魔物の巣窟だ。一体倒したところでしばらくするとまた新手がやってくる。


 その証拠にすぐに俺たちは敵と遭遇することになる。



「いたな」

「――!?」



 出会ったのは宙にふわふわと浮かぶ骸骨。


 ボロボロのマントのようなものを羽織っており、所々金色の刺繍が施されている。


「へぇ……初めて見たな。骸骨マントってとこか」

「…………エルダーリッチ」


“でたぁあああ!”

“火、水、土、風の4属性の魔法を使いこなすアンデットモンスター!”

“こいつもA級だぞ……”

“しかも地龍と張るレベルだ……”


 俺たちが奴を認識したと同時に骸骨もこちらに顔を向ける。


 すると唐突に骸骨は両手を広げ、空中に色が異なる4つの光の玉が出現させる。


 それから人差し指をこちらに向けると、その玉が螺旋を描きながら一つに集まり、不規則に混ざり合いながらまるでドリルのように急速にこちらに飛んできた。



「いきなり!? ヤバっ!」

「おらぁ!」



 ――バシィィィィーン!



 俺が飛んできたそのドリル玉を殴りつけると、まるでクラッカーが鳴らされたような音共に弾け飛び、そのまま霧散した。



“えええええええ!?”

“魔法を殴った!?”

“ば・け・も・の”

“滅也最強!”


「す、すごい……魔法玉を殴るなんて」

「目に見えるもんは全て殴れるんだよ! なぁ!」


 骸骨マントは一撃で仕留められるとでも思っていたのかひどく困惑している。


 この隙にジャンプして接近し、その脆そうな体に拳を叩きつけてぶっ倒した。


「次だ!」

「もう!? ひぃぃぃ」



 それからも数々の魔物をぶっ倒しまくった。


 巨大トカゲや動く鎧の魔物、でっかいハリネズミなんかもいたが全て殴り倒していく。



「ラスト!」



 ――パーーン!!



 風船のように体が膨らんでいる鳥を殴りつけ破裂させた。


「ふぅ……これで終了だな。満足満足」

「ぜ、全部A級の魔物だった……」


 みなみは何に疲労したのか汗を垂らしながらへたれこんでいる。


“みなちーがここまで振り回されるの初めて見たかもww”

“息絶え絶えで草”

“そんな姿も可愛い♡”

“みなちー不憫……”

“無事で良かった”


「満足したから帰るぞ。これで終わりでいいな?」

「はぁ……はぁ……う、うん! ありがとね。じゃ、じゃあそんな所で、今回の配信はこれで終わりたいと思います! みんなまたねー! 今度振り返り雑談でもやるからー!」


“おつすい”

“おつすーい!”

“どうなることかと思ったけど”

“結果的には面白かったからよし”

“またこのコラボ待ってるわ!”

“雑談楽しみにしてるぞー”



 そしてみなみの言葉で、今回の配信は終了を迎えた。


 今日も魔物と戦うのは楽しかったな。





―――――

 

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