第27話
葬儀は、身内のみで行われた簡単なものだった。
藤原さんの「お別れの会」には、大勢のファンが詰めかけて、大混乱だったというのに。
式の間じゅうずっと、場違いなほど明るい音を流していたのは、小さなモニターだった。
藤原さんの曲に合わせて作られた人形劇と、役者(?)として出てくる4人の姿。
直井さんが生前、自分が死んだら葬式でかけてほしいと言っていた曲だそうだ。
何を思って選んだのかは知らない。
でもそこには確かに、笑い合う4人がいた。
…それは、ほんのわずかな変化。
4人の人間が居たか居ないか、ただそれだけのこと。
音楽、この世界、世の中全体から見たら、きっと取るに足らない些細な違いだろう。
―――けれど。
全てが終わった今、また歩き出す。
明日も仕事だ。
生き続ける以上、終わりはない。
「人間という仕事を与えられて、どれくらいだ…」
一度世に出た音楽にも、終わりはない。
たとえ奏者がいなくなっても、音源が廃盤になってしまったとしても、口ずさむ人間がいる限り。
「美しくなんかなくて、優しくも出来なくて…」
泣きはしない。ただ想うだけだ。
「それも全て、気が狂うほど…」
せめて4人が、空の向こうで笑っていますように。
「まともな日常…」
【了】
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