第9話
カチャン、と微かな音を立ててドアノブが回転する。
私はゆっくりと扉を滑らせ、部屋の中を静かに覗き込む。
そこには、天国があった。
比喩でもなんでもなく、天国があった。
壁一面に貼られたポスターやタペストリー。
棚に丁寧に並べられたアクスタ(アクリルスタンド)やぬいぐるみたち。
壁についているコルクボードに画鋲が刺され、そこにアクキー(アクリルキーホルダー)がかけられている。
痛バが廊下から受ける光を反射してキラリと光った。
机にはマイクらしき機械とパソコンやヘッドフォンなどが置かれている。
全て、ライトくんのグッズだ。
「………?????」
まさか部長も、ライトくんのファン?しかも結構なガチ勢??
まさかこんなに近くに同志がいたとは……もっと早く気づきたかった。
というかこんなにグッズ集めたの凄すぎる……えっ待ってあの缶バッジ、数量限定のやつじゃん!!羨ましい!!!!ていうか欲しい!!!!!!!
ゆっくりと、部屋に足を踏み入れる。
扉の裏にもポスターが貼られていた。
360度を推しに囲まれるこの空間で死ねたらどんなに幸せだろうか。マジで死ぬ時はここで死にたい。人ん家だけど。
「……あれ?これって……」
ふと目が止まったのは、あるアクキー。
ライト君の活動2周年のビジュアルのもの。
……まだ予約しかできないはずの。
見回すと、同じ2周年記念ビジュアルのアクスタと缶バッジも全種類揃っている。
なんで、部長が持っているんだろう。
手に入れられるのは、製造業者かな?頼んだらもらえるのかも。
それか……。
ある仮説が思い浮かんだ。
机の上の機材、まだ市場に出回っていないグッズ、そして品揃えが良すぎるこの部屋。
「部長、て……」
まさかね。
そこまで考えた時、背後から足音が聞こえてきた。
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