落花流水
第46話
――――東京。
私はいまとあるパチンコ店にいる。カエデとマナと化粧室でメイクを直していた。
「あたしさー」
「んーなあにー?」
「?」
このデジャヴ感にはなにも言うまい。そもそも過去のはカエデとマナじゃないし。あれ誰だっけ? 忘れてしまった。
「結婚するんだよね」
「はっ!?」
「え」
マナの発言に内心めちゃくちゃびっくりしている。カエデほどリアクション大きくはならないけど。
そうかー、もう20代後半に突入しているんだもんね、仕方がないというか当たり前というか。特別おかしいことでもないし、周りは焦り始めたりして……キャリアウーマンが羨ましくなったりして。
仕事も恋愛も不安定でなにもかも上手くいかないのに実家に帰るわけにもいかなくて、なにしに田舎から出てきたんだー? ってなる。
「あたしら置いてくとか寂しいよー、マナさーんっ」
「マナ、おめでとう」
「ありがとうー! 二人とも!」
「あたしは寂しいって言ったんだけど!? 聞いてた!?」
「え? カエデは違うの? やだ祝福してくれない友達なんて私要らないんだけどー」
「ああごめんマナさんーっ。おめでと! 許して?」
「調子がいいんだから、あんたは」
「ふふふ」
「葉月はどうなのよ?」
「確かに気になるー彼氏いなくない?」
「んー、そうだね。ずっと好きな人がいるんだー」
「へえ」
「初耳だよー!」
そのあとも私の話に食いついてくる二人をなんとか止めた。
化粧を直して、座っていた台に戻る。割合的には男の方が多くて、その内の数人が一斉にこちらを向く。座ってる人が歩いてる人を見るのも、いつも通りだな……。
「あたし帰るわ!」
「え、マナさん帰るの!?」
「ちょっとカエデ、私と二人じゃ嫌だっていうの?」
「違うよ葉月ー!」
「冗談だよ」
「もうっ」
マナの結婚相手は去年くらいから付き合ってたって噂の人だと思う。かなりイケメンでパチンコ店の店長。あ、この店ではなくて。
マナは昔ギャンブラーだったみたいで、パチンコ以外にも競馬だったり仲間内での賭け麻雀をしたりしていたらしい。
最近は落ち着いてるみたいだから、その婚約者の影響だったらいいことだなと思う。
……結婚、か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます