第47話

――今日は一旦勝ってたのにキリのいいところで止めなかったせいで負けてしまった。プラマイゼロなだけマシだけど。


カエデが換金している間に待っていると、数枚のお札を持って帰ってきた。モノグラムのヴィトンの財布に諭吉が入り込んで、ああ私なにしに来たのかなあ、なんて思った。




「帰ろっかー!」




おかげさまでカエデのテンションがめちゃくちゃ高い。諭吉一枚くれないかな? そしたら私も上がるんだけど。……いや冗談。



換金場所が外にある店で帰り際に一度店内を通らなければならない。駐車場の位置が反対側だから。


そう思って一度店内に戻った、その時だった。



「ねえねえ見てあの人イケメン!」



肩を思い切り揺らされてさすがにちょっとイラっとした。テンション上がるのは分かるけどさ。


渋々そちらを向くと――




「――――、」




声が出なかった。

あまりにも驚いて。


ろ、ロウ? え? なにこれ幻覚? とうとう私おかしくなってしまったの?



疑問符が飛び交う私の脳内は崩壊寸前かもしれない。そうしていると彼は近寄ってきて、声をかけてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る