第34話

「葉月はロウが死んだら悲しむし壊れるだろうね。そうすれば俺に泣きついてきてくれる。それだけだよ。ああ、こっちの方が単純だったかな」


「……それっておかしくない?」



私を好き。

好き=苦しめ。



ということ?

好きってことは大事にしたいってことなんじゃないの? 好きだけど別に相手に干渉しないとかはあるけど、それは一種の愛だと思う。話が違う。



「なんでそんなことするの?」


「葉月が俺を忘れないためだよ。全部そう。葉月の心の中に俺はいる。葉月の苦しみとして俺が」


「ヒナ兄……?」



背筋が凍る、そんな気がした。鳥肌が立つ。ロウが動こうとしたらヒナ兄が銃をロウに突きつける。



私の力なんて何の役にも立たない。すぐに振り払われるこの手。見ると震えていた。ああ、私怖いんだ。



「葉月のことが好きだよ。誰よりも俺が葉月を好きなんだ。葉月を好いているヒナタなんて要らないね。顔が綺麗な人間に揺らがない純粋な人間だったよ彼は」



「……?」



「だってこの“アタシ”より葉月を選んだんだから。所詮はゴミだった。葉月に付きまとうのをやめさせるために、俺は女になってヒナタに近づいた。無意味だって知った時の無念さ、分かる?」


「わ、分かんない」



分かるわけがなかった。

私から遠ざけてヒナタの感情を自分に向けるために女になったというのだから。



それってこういうこと?



「ヒナ兄はヒナタを好きじゃなかった?」


「ああ好きじゃないね寧ろ嫌いだった。純粋に葉月が好きなんだよ……なんて嘘。葉月に近づけさせないために本気でヒナタを好きになったよ。全部全部葉月のためだ」

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