第29話
どれだけ優しい人間でも裏がある。無償の愛を捧げられる仏のような人がいたとして、それはそれで憎たらしい。素直な優しさって何。不器用な優しさって何。理解出来ない。
それなのに優しくしてほしい。こんな人間に誰も優しくなんかしてくれない。
「俺を殺すのは構わない」
「は……?」
「俺も人を殺めたことがある人間として、どこかで誰かに殺されたって仕方がない。でもそれなりに俺に関心を持って俺を憎んで殺してほしい」
「頭おかしいんじゃないの?」
「……そうだといい」
「意味不明なんだけど」
表情一つ変えないで、じっと座っている。煙草を吸ったり吐いたりする呼吸音だけが部屋に響いて、ここにいるアタシや銃の事なんてまるで眼中にない。
絶対頭おかしい。
テーブルに置いてあるガラスの灰皿に煙草の吸殻が盛り付けられる。さながらアートだ。山のようになっている。何本吸う? 何本目? なんのために吸う? 煙草を吸い続ける指と口元が気になってくる。
――その時だった。
ガン、とドアを開けるには似つかわしくないような音をさせて入ってきた。
「葉月」
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