第28話
「葉月がここに来るのね」
「そうだな」
「平気な顔しちゃってさ。分かってる? アタシは知ってるのよ、アンタが葉月をいじめた人間を殺したってこと」
「……」
ソファーに腰掛けたままタバコを吸うこの男こそが葉月が愛してやまないロウ。
この男のどこがいいのかは全くもって分からないけど、美形であることだけは間違いない。
アタシはテーブルに座ってロウに突きつけた。黒く輝くピストルを。
「マンションでそんなもん使うのかよ」
「まさか……怖がってる?」
――ガッ、と強く胸倉を掴まれた。思わず前のめりになる。ロウの顔が目の前にあった。冷たい目がアタシを見る。
「やめておけ。こんな近距離で殺ったって壁に穴開けるのがオチだろ。てめえが逮捕されるだけだ――過去のことも明るみに出る」
「ふうん、心配してくれてるの?」
嫌な感じ。
葉月のことを誰よりも愛しているのはアンタなんでしょ? だったら心配なんてするわけないわよね。
どうして二人がすれ違っているのかは知らないけど、寧ろ上手くいかなくていいんじゃないって感じ。いつまでも躓いていればいい。その方が面白いから。
「明るみに出て困るのは本当にアタシだけかな」
「なに、脅迫?」
「そんな怖いことしないよーってか、アタシ別にここでアンタを殺したって構わないのよ。明るみに出たっていい。葉月も殺す。なんのためにって聞いてよ」
「あ?」
「捕まりたいの。どこかに鎖で繋いでいてほしい」
「それこそなんのために」
「それは言えない」
「……あ、そ」
口数の少ない男。感情表現が下手くそか、あるいは乏しいのか、面倒臭いのか……なんでもいいけど。こういう男すごく嫌い。
ヒナタのように殺されるって聞いてビビってよ。驚いてよ。泣いて償って謝って。苦しんで死んで。
愛するほど相手がクズに見える。
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