煙草

「こんにちは! お煙草はいつものをお一つでよろしいですか?」

「は……はい」


青年は爽やかな笑顔のまま、煙草を取りに棚に向かった。

レジには、その青年によってカゴから取り出された

のり弁当と水、それからスナック菓子が整然と並んでいる。


「温めはいかがいたしますか?」

「大丈夫です」


僕はレジ横にあるライターを一つ、青年に渡した。

「1,660円になります!」


僕がカードで決済をしている間、青年は食品類を袋に詰め、

「ありがとうございました!」

と言いながら、煙草とライターはそのまま僕の手に渡した。


店を出て手に握ったままの煙草を見つめる。

「……電子煙草に変えたんだけどな」

このコンビニに最後に来たのは、確か一年くらい前だったはずなのに、

青年は僕の煙草の銘柄を覚えていて、昨日も来た客のように接した。


フィルムを破ると煙草の香ばしい匂いにくらっとした。

「……久しぶりに吸ってみるか」


紙煙草が前より美味しく感じたのが、

店員のせいか、ご無沙汰なせいか、

僕には分からなかったけれど、なんだか少し嬉しかった。

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