第9話
陽射しがオレンジ色をぎらぎらと照り付けているのだ。
綺麗な水面の様に反射して目を眩ませる。
彼女は只、そこで座り込んだまま、その色を見下ろしていた。
「弐っ」
直ぐ近くで倒れ込んだ弐に愛斗が駆け寄る。
糸が切れた様に気をやった彼の頬を軽く叩こうとも目は開けてくれなかった。
ショックから意識を失ったのだと思える。
「っ、は、ぁっ………ぅ、っ…………」
「………おいっ………深呼吸して!ゆっくりっ………くそ、何か袋無かったっけ………、」
がたがたと震え膝から落ちた慈雨が苦しそうに息を乱す。
目を見開いて必死に踠くも、もう十分に得た筈の酸素を更に欲しがり呼吸困難の感覚に陥って、己の喉を握りその目尻に涙を溜めていた。
弐を気にしながらも今度は慈雨の元へと走った愛斗が彼女の背を擦りながらポケットの中を漁る。
顔には焦りの思いがあった。
まるで自分だけが時を進んでいるかの様な実感に彼が大声を上げる。
「………イアン!人手が足りないっ………早く応援呼んで!」
「っ…………!」
横たわる弐と過剰な息を吸い込む慈雨に目をやりそう叫べば漸くイアンと真樹が我に返る。
跳ね上がる様にして状況を飲み込んだイアンが携帯電話を取り出せば、その横で、真樹は己の無力さに二度目の後悔を身体に染み渡らせていた。
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