第5話
「…………嗚呼、やっぱりか。違いないな。己の目の前から消えてしまった、それが余程大きかったんだろう。それ程あの日は影響あるものだったんだな」
―――――――死が叶也の望みを叶えたのだ。
失って初めて零は叶也を心の底から渇望したのだ。
そうでなければ零は叶也だけを見つめることがなかった。
「人の死というのは恐ろしいですね。こうして意識を一瞬にして奪う。それまで見ていなかったものを強制的に見せる様な引き付ける力がある」
「そうだな。俺もその一人ではあるが、叶也の死は間違いなく零チャンを狂わせた。ある意味では叶也の圧勝か………本当、怖い男だったよ」
それきり二人は言葉を交わすことを止めた。
誠が本のページを捲る音だけがそこにはあった。
―――――叶也は己の死を悔いただろうか。
二人は脳裏に同じ景色を浮かべた。
頭の中で形を成した白金色の男は、どうしてか口許に弧を描いていた。
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