主人公と女の子が友達になる、心温まる場面から物語は幕を開けます。このままずっと優しい空気で進むのかと思いきや、容赦のない強敵が立ちはだかり、白熱のバトルが繰り広げられる一面もあり、緩急のついた展開に引き込まれました。なかでも最大の魅力は、主人公の「のじゃ」口調。単なる口癖ではなく、「のじゃ!」が文字通り“魔法の言葉”として呪文になり、唱えることで不思議な効果を生むという仕掛けが面白いです。どこか幻想的で独特な世界観とも相まって、読み終えたあとにじんわりとあたたかい余韻が残る作品です。
寂しさを抱えた留学生ムツキちゃんと、笑顔を守ることを信念とする狐の御使いシイロイさんの出会いから始まるお話は、とても優しい余韻を残してくれます。日常の中の小さな勇気や優しさが丁寧に描かれており、読んでいると自然と微笑んでしまうような心地よさがあります。一方で、時に緊迫した戦闘シーンもあり、静かな物語に思わぬ緊張感とメリハリを与えてくれるのも魅力です。ほっこりと癒されながらも、ドラマチックな展開を楽しみたい方にぴったりの一作です。
これは、どんどんファンが増えてほしい物語なのです。個性的な名前のキャラクターたちのやさしい世界。でもそれだけじゃないのです。読みやすいのに世界の細やかなディテールが楽しいのです。登場人物のまなざしをずっと追いかけたくなる冒険世界なのです。