Day3

「んぅ〜〜」


「ふぁ...よく寝た」



凛は久しぶりに外へ出て遊んだからか、いつもよりも疲労が溜まり睡眠の質が向上した



「ん?」



くんくん、と鼻を鳴らして匂いを嗅ぐと何やら美味しそうな食欲のそそられる匂いがする



「...まさか」



凛はパジャマのままリビングへ行くと、予想通り朝ごはんを作っている菜乃花の姿があった



「あっ凛さん、おはようございます!キッチン借りてますね」


「いや、えっあのー...はい」



凛は言い返しても意味がない事を悟り現状を受け入れた



        ーーーーー



「美味しいです!」


「それはよかったです」



トーストとサラダとコーヒーの朝食を嗜んでいると凛はある事を思い出す



「そうだ菜乃花さん、今日は仕事関係の人が家に来るのでその間は自分の部屋へ行って下さい」


「.....凛さんの寝室じゃダメですか?」


「そこまでして帰りたくない理由は何ですか...でもまぁ、うーん...出て来ないなら良いですよ」


「本当ですか!」


にぱぁっと嬉しそうに笑う菜乃花は普段クールな印象を見せる彼女とはまた違う雰囲気を纏い凛の心を掴む



(可愛い!...こんなよく分からない関係性じゃ無かったら惚れてたな)



「そういえば凛さんって職業なんですか?」


「作家です、まぁ有名ではないけど食べていける程度にはって感じですね」


「作家さん!凄いです!」


「えへへ、そうかな」



       ーーーーー



緩くのんびりとした時間はゆったりとすぎて凛と仕事仲間が会う時間になった

菜乃花は既に凛の寝室へと入ったので問題はない



ピンポーンとチャイムが鳴った



「はーーい!」



扉を開けると緩いウェーブのかかった綺麗な金髪をハーフアップにした女性がいた



「朝日さん今日もよろしくお願いします!」


「こちらこそよろしくお願いしますわ」




       ーーーーー



「ここはもっと情熱的にした方がええんちゃう?」


「そうかな...あっ、確かにその方がラストの展開で燃えるね」



凛と凛の担当である朝日が会話を弾ませる一方で菜乃花は寝室の隙間から2人を除いていた



『むむむむむ.....なんですかあの女性は」


『やけに距離感が近いような、あっ!なんで肩を掴むんですか!?私も触った事ないのに!」


 

菜乃花はヒソヒソと文句を言う



「ねぇ凛...1つ聞いてもいいか?」


「何をですか?」



朝日は真剣な表情で質問を問いかける



「....あの国民的アイドルの比折菜乃花と付き合ってるってやつ、本当なん?」


「作家の担当が詮索するなんて良くないのは分かるけどどうしても気になって」


「...えーーと、なんて言ったら良いのかな」


「て事はやっぱ本当なんか!?」


「いや本当といえば本当だし嘘といえば嘘とも言いますし」



凛は朝日へ対して事の経緯を伝える



「ほぉー...そんな事があるんやなぁ」


「でも、凛それ都合の良いように利用されてないか?」


「え?利用?」


「うん」



凛はこれまでを振り返り悩む


確かに、よく考えれば菜乃花程のアイドルが私なんかと、しかも、女性と付き合うなんて宣言をするのは100%裏があるに決まっている


例えば本命を隠すために私との関係を発表したり、恋人という理由をつけて色々な面倒事を揉み消そうとしたり、そもそも、なぜ凛が菜乃花に選ばれたのかなんて分からないのだ


たまたまそこに凛が居たから、結局はそれでおしまいなのだ



「なぁ、凛はこれからどうしたい?」


「どうって」



これから何をしたいか、今はなぁなぁで菜乃花と過ごしているがこの生活もいつかは終わる


凛も凛とてこれ以上下手に仲良くしてしまうと恋愛対象として菜乃花を見てしまう気がするのでそうなる前に何か手を打ちたい



「なぁ凛、凛は比折菜乃花の事どう思ってる?」


「私は菜乃花さんの事......仲の良い隣人、と思ってますよ」



えへへと作り笑いを浮かべる凛とは対照的に、朝日は見るものを凍らせるような冷たい視線で凛を見下ろす



「嘘つき」



朝日は凛の膝の上へと座ると両腕を凛の首へと回す


そして凛が困惑している間にも朝日は艶やかな唇を凛の綺麗な首筋へと近づけていく


そしてあと少しで唇が触れるという瞬間に寝室の扉がバァァン!!と勢いよく開けられる



「人の恋人に何してんですかぁ?????????????」


「えっ菜乃花さんなんで出てきたの!?」


「......」



菜乃花は普段の優しい目つきではなく獣のような、捕食者のような目つきで朝日を見つめる



「恋人?仮初やろ」



しかし朝日と負けておらず、2人の視線が混じり合い部屋の中は修羅場と化した



「うちな、2人の関係を知った時からずっと思ってたんよ」


「絶対うちの方が凛の事幸せに出来るって」


「それは貴方の妄想でしょう?第一貴方は凛さんの何なんですか?ただの凛さんの担当というだけでしょう」


「お前みたいなぽっと出のやつよりも濃くて甘い時間過ごした自信はあるわ」


「で?だから何ですか?事実としていま凛さんは私とお付き合いしていますよ」


「無理矢理やろ?」


「っ!!」


「...図星か」


「なぁ凛、実際凛はどう考えてるんや?この状況」


「えっ!?」



凛は話の外にいたと思ったらいきなり会話の中へと引きずりこまれて動揺する


相棒のように考えていた相手からまさかの告白と、初めてみる菜乃花の余裕のない表情に凛の脳は既に溶け切っていた

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