第25話

そうして翌日

待ち合わせ場所へ向かえば既に彼はいた。


周りには人がいっぱいいたけど身長が高いからすぐに見つけられた。



「田端くん!」



声を掛ければ彼はこちらを見る。

私服は、ジャケットにデニムパンツ、レザーシューズとまぁ印象通り爽やか恰好だった。



「あ、品川さ」



目が合った田端くんはぱっと顔を明るくさせ、私の名前を呼ぼうとして途中で止まる。

どうしたんだろう。私の恰好でどこかおかしい所でもあるだろうかと首を傾げる。



「…かわいい」



ぼそっと呟いた声は残念ながら私の耳にも届いていて、少し頬が熱くなる。

誰かに可愛いなんて言われたのは初めてだったので嬉しいけどちょっと気恥しい。



「ありがとう。田端くんもかっこいいよ」


「そっ……か」


「……」


「……」



照れたように顔を赤くさせる田端くん。

出会ったばかりなのに謎の沈黙が落ちた。

普段沈黙が流れても気まずく感じないが、何故か居たたまれなくて話題を必死に探す。



「あ、田端くんって結構時間にしっかりしてるタイプなんだね。待ち合わせ10分前なのに」



出せそうな話題が時間だった。

あまり人を待たせたくない私は10分前行動を心掛けていたのだが、彼のほうが先にいたので、田端くんも同じく時間にしっかりしているタイプなのかと思う。


だが田端くんは何故か頬を赤くし、恥ずかしそうに目を逸らす。



「普段はそうでもないよ」


「そうなの?」


「……楽しみで、つい」



耳を赤くして言う田端くん

今まで男の子に対して可愛いと思ったことなんて一度もなかったが、この瞬間の田端くんはすごくかわいいと思ってしまった私はきっと悪くないはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る