二章 浮気された日

第20話

「おわったー」



私はぐっと伸びをしてため息交じりに言葉を吐きだした。

高校一年の終業式。この日漸く長かった一年が終わったのだ。

クソ長い校長の話を聞いていたせいか、肩が妙に凝っている気がして片手で揉みながら席を立つ。

他の子はすぐに体育館をでて荷物を取りに教室にいくことはなく、わいわいと春休みの予定を立てたり、友達と一年の思い出を振り返ったりして楽しそうに過ごしている。


だが生憎私は長期休暇に予定を立ててはしゃげるような友達もいなければ、思い返すような思い出もない為

荷物を取ってさっさと家に帰るためにも教室へ向かう。きっと私の春休みは昼夜逆転、ゲーム生活が殆どで、偶に夏樹にショッピングにでも連れ出されるだけで終わることだろう。



「あの」



中学の頃と一切変わらないが、それでいい



「ねぇ」



さて家に帰ったらまずなにしよう。

取り敢えず昨日買ったゲームの全クリでも目指そうかな。



「ねぇってば」



誰かに腕を引かれて立ち止まる。



「え?」



振り返れば、一人の男子生徒がいた。


おお、かっこいい。所謂イケメンってやつだ…。


着崩されることなくしっかりと着られた制服。ちゃんと上まで締まっている青いネクタイ

黒髪に黒目、目元には黒子があって、背の高い男の


彼のことは”見たことがあった”。

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