第11話

品川しながわさん。どうしたの?」


「んーん。なんでもないよ」



これなら彼氏要らなかったかもな。なんて身勝手にも思ってしまう私は最低なのかもしれない。



「そう?あ、今日さ。放課後一緒にクレープ屋さんいかない?品川さんが好きそうなところがあってさ」


「ん、いこうかな」


「ほんと?放課後デートだね。楽しみにしてる」



微笑んで、最後の一口を食べると田端くんは私たちに手を振って教室を出ていく。彼と私は別のクラスなのだ。



「みた?放課後デートってだけであんなに嬉しそうにしててさ。かわいいよねぇ…」



夏樹は田端くんの背を眺めていう。



「かっこいいのにかわいいとか最強じゃん。ほんっと愛されてる睦月が羨ましいよ」



心底羨ましそうに夏樹がいう。


まぁ、確かに本当に愛されているなら、幸せなんだと思う。


ぱたぱたと、さっきの女子が席を立って廊下へ飛び出していくのが見えた。

その後「湊くんまってぇ!」という猫なで声が遠くから聞こえてきた。

どうせ明日の昼休みの約束でも取り付けるつもりなのだろう。


浮気していることさえなければ最高の彼氏。



「まぁ、そうかもね」



でも私も大概だし、最低同士お似合いってことでいいか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る