第6話

夏樹の涙もある程度止まってきたところで、私は彼女と共に教室に戻る。

傷心中の夏樹は机に突っ伏して呻いている。


どうやら本当にその彼氏のことが好きだったらしい。


告白されるまで「ありえない」とか「女の敵」とか散々言っていたくせに。余程付き合った一か月が楽しかったんだろうな。



「ジュース買ってきてあげる。なにがいい?」


「モンスター」


「地味に高い物要求してこないでよ、図々しい」


「うそ、ミルクティー」


「ん」



元気のない夏樹の頭をぽんっと叩き私は自動販売機のある場所まで向かう。


その途中、あの図書室の前を通った。


ちらりと中を覗く。人の気配はない。解散したらしい。

ここは私のお気に入りスポットの一つなので、できればもうここで盛らないで欲しい。


なんて、私は浮気されたことより浮気場所に対して不満を抱いていた。

普通なら、夏樹のように浮気されたことを怒るはずなのだろうが、私は微塵もそういった気持ちが湧いてこなかった。

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