第31話
仕事中は飄々とした態度を崩さない俺が、後輩の前で情けない話をされたくないだろうと、気を遣ってくれたつもりらしい。
別にそんなことを頼もうと思って話し掛けたわけではなかったが、彼女がどこか楽しそうにしていたので、そういうことにしておいた。
その日会うことができなかったら大人しく諦めるつもりだったが、自分を虎視眈々と狙う男の前で、無防備に可愛らしく笑ってしまう郁ちゃんが悪い。
「顔色は、あのときより随分良さそうですね。安心しました」
「元々、体は丈夫な方なんです。ここ最近、無理をしすぎていただけで」
「お仕事、忙しそうですね」
「1つ片付けたら、その三倍業務が降ってくる感覚ですね。自分の処理能力が足りないせいです」
「周りからすごく頼りにされているんだろうなって、今日少し見ていただけでも思いました」
「優しいフォローをありがとうございます」
これくらいの褒め言葉、慣れているつもりだった。
どんな女の子も、大抵最初はにこにこと愛想がよく、手に入れた俺の情報の全てを褒めようとする。
ただ、上滑りするような言葉たちが、本当に心に響くようなことはなかったけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます