第3話 17歳
17歳
人気ガールズアイドルグループ、16アイデンティティー・エイジ。通称16アイエイは14歳から23歳の女の子16人で構成されている。
あたしは、石峰
あたしは
「そんなことないよ、うち、あの事務所の傘下だから。扱いは同じ」
相変わらず綺麗な顔をした社長がパソコンを見ながら言った。この3年で所属タレントも増えて、うちの事務所はまだ新進だけど弱小ではなくなった。そのせいで、あたしなんか、社長にとってその他大勢になった気がする。
「で、カオ、あなた、いつ本気になってくれんの?」
パソコンから16アイエイの新曲が流れる。この間MVを撮り終えたばかりの新曲。
「カオなら、
くるっとノートパソコンを回して、あたしにも見えるようにした。ちょうど画面はあたしの顔が大きく映っているところで、社長はそこで一時停止した。
「カオは、人を惹きつける。少なくとも、私はカオに惹きつけられてる」
この社長の
社長はずるい。きっと、こうやって、この事務所のみんなを転がしてるに違いない。
「あたしは、ずっと本気でやってるんだけど」
「カオ」
社長がため息をついて、あたしを見る。その綺麗な目を見返せず、窓の方を見ながらあたしは言った。
「
社長が片目だけを少し見開いた。入ったら何?と言うように。
「……キスしてよ」
社長は大きく目を見開いた。そうだよね、驚くよね。あたしだって、今、なんでこんなこと言ったか分かんないよ。
「冗談だから」
そう言って、社長室から飛び出したけど、足が動かなくて、ドアの前で立ち尽くした。
立ったまま、なぜだか、泣いた。
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