第90話 屈服したメス

唇を離した隼人は鈴音へ訊く。


「雨宮さん……もういいよね?」


「えぇ……このホテルは貸し切り状態よ。だから……貴方の欲望を私にぶつけて」


「……ッ!ちゅっ」

 

再び隼人は鈴音と軽いキスをする。しかし彼女が我慢出来ないのか貪るように彼の口の中に舌を入れてくる。それに驚きながらも隼人は男らしい力強さと荒々しさがありながら、繊細な唇の動きで彼女を骨抜きにしていく。


「ちゅっ、あぁ、ぅんっ……チュクッ、ンンッぅ……ちゅぷっ」


最初は受け身だった鈴音も、夢中で唾液を奪い合う行為が続けられる。 そして断りも入れずに彼女のマイクロビキニを脱がす。最早局部以外隠れていないが、それでも彼女の隠されいていたお宝部分が露わとなる。


彼女の雪の様に眩しい美肌が視界に入る。

彫刻のように形の良い胸元は、彼女が呼吸する度に上下に揺れていた。


「ほんと綺麗だよ」


「……嬉しいわ//」


全てを見られても嬉しそうに口角を上げて蕩けた表情で男を見つめている。


「ここでシてもいい?」


「ここで?」


「あぁ、雪が降ってて幻想的だから……」


「クスッ、まるで獣みたいね。……でも、いいわよ。私たちも獣になりましょう?」


隼人はタオルと一緒に持ってきたコンドームを手に取ると彼女に叩かれて湯船へとポチャと落ちる。


「どうした?」


「そんなモノ必要ないわ。避妊はしているから……貴方の全てを私に向けて欲しいの//」


鈴音はお尻を隼人へと突きだす。そして誘うかのように左右へと揺らす。


「本当にいいんだな?」


「クスッ、今頃怖気づいたのかしら?私はいつでも準備は出来ているわよ」


「最終確認しただけだ……いくぞ」


 そうして隼人と鈴音はお互いに初めてを捧げる。


****


「鈴音さん、鈴音さん……鈴音っ!鈴音ぇっ!」


「あんっ、呼び捨て……っ、ダメっ……」


「鈴音っ! 好きだっ!」


北海道の冬の大地で、二人の行為は夕食まで続いた。


****


「ふふっ、……激し過ぎよ、隼人君」


唇を放した鈴音がそう言った。

心に何かが満たされていく中、彼女の頭を撫でる。

気持ちよさそうに目を瞑る彼女は、まるで猫みたいであった。


「ごめん、止められなくて。鈴音さんがとても魅力的だったから」


「なら仕方ないわね。私の旦那様のアソコが大きすぎてヘトヘトよ」


「でも鈴音さんだって好きだろ?あんなにヨガっていたんだからさ」


意地の悪い返答に彼女は眉を歪ませる。図星だったかのように彼の胸元に額を当てて顔を見られないようにした。そんな仕草が再び隼人の情欲を刺激する。


「……言わないで頂戴、恥ずかしい……」


「鈴音さん、今夜もシようね?」


「クスッ、本当に私の予想通り性欲が凄いわね……。貴方の欲望を受け止めるのも妻の責務よ」


「鈴音さんも俺の事言えないくらいには性欲強いと思うけど?」


「あら、女にも性欲はあるのだから仕方ないの」


「でも俺はそんな鈴音さんが大好きで、愛しているよ」


「……ッ!わ、私も……その…愛しているわ//」


隼人を抱きしめながら、か細い声で話す。彼女は上目遣いで愛を伝える。蕩け切った表情と今にも恥ずかしさで泣きだしそうな表情が、普段のギャップを感じさせて、もう少し彼女を虐めたいと感じさせてしまう。そんな嗜虐心が隼人の心を支配しそうになる。


「なら毎日シようね」


「それは……私の仕事上難しいわね……ごめんなさい」


急に暗い表情へと鈴音は変わる。日本で有数の不動産一家の令嬢なのだから今後の生活で多忙になるのは目に見えている。そして、彼女に果たす責務も大きくなるだろう。毎日隼人と会える時間が無いかもしれない。


「ごめん、意地悪で言った」


「……酷い夫ね。それに貴方のためを想って穂乃果さん達への浮気を認めている寛大な妻に感謝してくれてもいいのよ?」


「……だから俺の浮気を見逃していたんだね」


(厳密に言えば付き合っていないから浮気では無いだろうけど)


「えぇそうよ。……本当は嫌なのよ?でも、彼女達と会って貴方への気持ちが本物で一生続くと直ぐに気付かされたわ。だから……これ以上の浮気は許さないわよ!」


「当たり前だ。それに俺は何が合っても鈴音さんのことが第一だよ。こんな綺麗な嫁を嫌いになれるはずもないけどな」


「……急に褒めるようになったわね。もっと大学で一緒にいる時も褒めて欲しかったのだけれど?」


「そ、それは……ごめん。だって、鈴音さんが褒められるなんて慣れていると思って……」


隼人の大学は学生数が非常に多い。それでも鈴音が一番美しい容姿をしていることは明白である。更に彼女ほどの家柄と才覚を持ち合わせているのだから、神は不公平だ。


「ハァ……女心が分かっていないわね。好きな人に褒められることが女にとって嬉しいのよ。他の有象無象の意見なんて、どうでもいいの」


「……なら、これからは沢山俺の想いを伝えるよ。一切セーブなんてしない」


「ふふっ……ねえ、当たっているわよ?」


「……え、まだ一時間も経っていないのに!」


行為を終わって一時間も経っていないのに既に復活している自身の体に驚いていた。


「また、興奮しちゃったのかしら?」


「いいかな?」


「クスッ……ダメよ」


「な、なんで?」


「だって、隼人君は一度理性の崩壊すると止まらないもの。私が何度止めてと言っても、ずっと腰を振り続けていたじゃない」


「そ、それは……フリだと思っていたし鈴音さんが気持ちよさそうだったから……。それに直ぐに自分から俺の上に乗って動いていたじゃないかっ!」


「そ、それは……貴方が乗れと命令したからじゃない。き、気持ちは良かったけれど……//」


「す、鈴音っ!」


珍しく見せる照れた表情に隼人の臨界点が突破してしまう。普段からミステリアスな女性が表情を変えるだけで、ギャップ萌えのように魅力的に感じるのだからズルいものだ。無理やり鈴音をベッドへと押し倒す。それでも宝石を扱うように優しく手を添えてだ。


「ちょ、ちょっと本当に夕食まで時間も無いのよ?」


「大丈夫だ。俺に任せろ……さっきのでコツは掴んだからさ」


「こ、こんな時に持ち前の器用さを使わなくたって……っあぁん」


「ほら言った通りだろ?」


鈴音は今出てしまった喘ぎ声が自身のモノなのか直ぐに理解出来なかった。そして隼人の言ったことがハッタリでないことに気付き恐れからなのか彼を突き離そうと抵抗するも虚しく終わる。


「あれ、これって抵抗しているの?ダメだよ、嫌ならもっと抵抗しないと」


「ち、力が入らないの……」


「ふ~ん、でも凄く嬉しそうな顔をしているよ」


「なっ……//」


「ほんと可愛いよ」


隼人は再び鈴音へと自身の欲望をぶつけた。

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