パート11: 廃坑への道のりと入り口での警戒

アークライトの北門を出て、しばらくは整備された街道を歩く。

馬車や旅人の姿もちらほら見えて、まだ安心感がある。


(ここから少し外れた丘陵地帯、だったな)


地図で確認した分岐点で、俺は街道を外れ、草の生い茂る緩やかな坂道へと足を踏み入れた。

迷いの森とは違って、視界は開けている。だが、その分、遠くの物陰や岩陰にも注意が必要だ。


(森とは違う警戒の仕方がいるな…)


俺は周囲に常に気を配りながら、丘陵地帯を進んでいく。

新しい装備は、やはり少し重い。特に上半身のプレート部分と、腕のカイトシールドがずしりとくる。

でも、歩きにくいほどではない。これも慣れだろう。


(体力配分も考えないとな)


廃坑に着く前にバテてしまっては元も子もない。

俺は意識してペースを抑え、呼吸を整えながら歩いた。


幸い、道中でゴブリンや危険な獣に遭遇することはなかった。

時折、小動物が駆け抜けていく姿が見えるくらいで、平和な道のりだった。


(そろそろ、この辺りのはずだが…)


地図と周囲の地形を見比べながら進むと、丘の中腹に、不自然に口を開けた横穴が見えてきた。

入り口の周りは崩れかけた木材で補強されているが、それも朽ちかけていて、いつ崩れてもおかしくないように見える。


(あれが、廃坑の入り口か…)


近づいてみると、入り口からはひんやりと湿った、カビ臭い空気が流れ出してきている。

日の光もほとんど届かない奥は、深い闇に包まれているように見えた。


(うわ…なんか、不気味な雰囲気だな…)


思わずごくりと唾を飲み込む。

耳を澄ますと、風の音に混じって、奥の方から…


チチチ…カリカリ…


微かに、何か小さな物音が聞こえる気がする。

ネズミだろうか? それとも、ただの気のせいか?


(巨大ネズミが巣食ってるって話だしな…油断はできない)


俺は腰のナイトソードの柄を握り、左腕のカイトシールドを構え直す。

新しい装備が、この不気味な闇の中で頼もしく感じられた。


(よし…行くか)


依頼は巨大ネズミの「駆除」。

中にいるであろう敵を、全て倒さなければならない。

俺は深呼吸を一つして、覚悟を決め、湿った空気が漂う廃坑の入り口へと、慎重に足を踏み入れた。

ひんやりとした闇が、俺を包み込んだ。

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