パート10: 備えあれば憂いなし

(よし、依頼は決まった。次は準備だ)


俺は『廃坑の巨大ネズミ駆除』の依頼書を握りしめ、まずはギルドの資料閲覧コーナーへ向かった。

受付で依頼書を見せると、職員が該当する廃坑の場所が記された簡単な地図と、過去の報告書(ほとんどが「異常なし」だったが)を閲覧させてくれた。


(ふむふむ…アークライトの北門を出て、街道を少し外れた丘陵地帯か。街からは半日もかからない距離だな)


廃坑自体はかなり古く、もう何十年も使われていないらしい。

巨大ネズミが巣食ったのは最近のことなのかもしれない。


(場所は大体分かった。次は消耗品の補充だな)


グレイウルフ戦で回復ポーションを1本使ってしまったし、【ファーストエイド】があるとはいえ、予備は多いに越したことはない。

俺はギルドを出て、馴染みの道具屋へと向かった。


「いらっしゃい。おや、ユウキじゃないか。その格好、ずいぶん立派になったな!」


道具屋の親父さんが、俺の新しい装備を見て目を丸くした。


「へへ、まあちょっと奮発しまして。それより親父さん、回復ポーションをいくつか欲しいんだ」


「あいよ。いつもの一番安いやつかい?」


「いや、今回はこっちの中くらいのやつを3本もらおうかな」


俺は少しだけランクの高い、緑色の液体が入ったポーションを指差した。

値段は少し高いけど、回復量も多いはずだ。これも投資だ。


「ほう、景気がいいねぇ。まいどあり!」


ポーション3本と、ついでに携帯食料(干し肉と固いパン)と水袋も新しく購入した。

これで準備は万端だ。


(あとは…)


道具屋を出て、アークライトの北門へ向かって歩きながら、ふとレナさんの言葉が頭をよぎった。


(黒っぽい影、か…)


本当に追跡者なのだろうか? それとも、ただの噂?

あの人のことだ、俺を試すために言っただけかもしれない。


(…考えたって仕方ない。今は依頼に集中しよう)


もし本当に危険が迫っているなら、それに備えるためにも、俺はもっと強くならないといけない。

そのためには、目の前の依頼を着実にこなしていくしかないんだ。


俺は雑念を振り払い、前を向く。

アークライトの北門が見えてきた。ここを抜ければ、街の外だ。


(よし、行くか!)


新しい剣『ナイトソード』を腰に、新しい盾『カイトシールド』を腕に。

胸と肩には鋼鉄の守り。

バックパックには回復薬と食料。

そして、心には次なる戦いへの意欲。


俺は衛兵に軽く会釈をして、アークライトの北門をくぐり抜けた。

目指すは、巨大ネズミが巣食うという古い廃坑。

新たな冒険が、また始まる!

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