第42話 紅い運命

 エイボンを討伐後、帰還用のゲートと宝箱が出現した。今回出現した宝箱は、2つだ。


「2つも宝箱を得られるなんて、ツイているな」


 さっそく、1つ目の宝箱を開く。

 そこには──


「……エイボンの書、か」


 ヒトの皮で装丁された、1冊の本。

 表紙には『جوهر سحر استحضار الأرواح』と書かれていた。そう、エイボンが記した書である。


死霊魔法ネクロマンスの本質、と書かれているな。アラビア語を勉強していて、よかったな」


 さっそく本を手に──することはない。

 この本を読めばどうなるか、その結末を俺は知っている。この本を読んだ結果、変わってしまった人々の話を何度か聞いたことがある。


「この本を読めば、《死霊魔法ネクロマンス》を習得できる。“死”を操るスキルは非常に魅力的だし、きっとゾグアス戦でも何かしらの役に立つだろう。だが──」


 この書を読むと発狂する。

 少しでも読めば精神に異常を来たしてしまい、意味不明な行動を取ってしまうのだ。実際にこの本を読んでおかしくなった人を、俺は何人か見てきた。


 どれだけ精神異常に耐性があっても、必ず発狂してしまうのだ。人肉に興味を示したり、意味も無く身体を改造したり、寒いオヤジギャグを言い放ったりなど、明らかな異常行動をとってしまうようになるのだ。


「こんな禁書、無い方が良いな」


 俺は書を手に取り──


「《下級の火球ファイア・ボール》」


 書を燃やした。

 轟々と勢い良く燃えて、やがて書は灰になった。いやぁ、なんだか良いことをした気分だ。


「さて、もう1つは何だろうな」


 宝箱を開く。

 そこには──


「お、おぉ!? ま、マジか……!!」


 宝箱に納められていたのは、深紅の義眼。

 ルビーのように、燃えるように、赤い。

 【蒼い奇跡】とは、対照的だ。


「こんなところで、【紅い運命】を獲得できるとは、思いもしなかったな」


【紅い運命】

ランク:SSS

効 果:装備者の魔法の効力が、50倍上昇する。

    装備者の身体能力が、100倍上昇する。

    一度装備すると、二度と外せない。


 かつて読んだ図鑑には、そう書かれていた。

 魔力の効力……要は威力が、50倍上昇する。それに加えて、身体能力が100倍も上昇するなんて……トンデモない強さだ。


 元々A級相応の俺の身体能力は、これでS級上位にまで引き上げられる。元々世界最強クラスの俺の魔法の強さは、さらに最強へと近づく。


「これがあれば……ゾグアスにも、勝てる。……いや、それは早計か」


 アイツと戦ったことのある俺だからこそ、【紅い運命】を装備した程度では勝てないことが嫌というほど理解できてしまう。これを装備すれば格段に強くなれるが、その程度で勝てるほど甘い相手ではないのだ。


 ゾグアスに勝つ為には、もっと強くなる必要がある。人類最強の俺でさえも、アイツとは天と地ほどの差があったのだから……宇宙最強になるくらい強くならねば、勝つことなどできないだろう。

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