職業を押し間違えたから始まるVRMMO

鋼音 鉄@高校生(マネージャー兼生徒会)

第1話 平凡なミス

「はぁ……難易度高過ぎでしょ…」


今時珍しいゲームコントローラーを地面に置きながらため息を吐いた少女は三門凛。

学校では優等生であり、家ではレトロゲームを愛する古代人である。

今回のレトロゲームはシューティングゲーム。

ただ弾幕を避けて反撃するゲームではあるが、弾幕の量が異常なまでに多い。


幾つものシューティングゲームを体験し、鬼畜ゲーにも慣れた凛ではあるものの、その難易度は口に出すのすらも憚られる難易度…。

凛が古いゲームをこよなく愛するレトロゲーマーではなかったら誰もやらない難易度だ。


それでもエンディングまで持っていっているのだから、さすがと言えるだろう。


「そろそろ手疲れてきたかも……10時間ぶっ通しはキツかったなぁ…」


そんな言葉と共に意識が向いた先はVRを体験するための機材。

5歳の誕生日にもらって以降、一回もプレイしたことはなかった。

新しいゲームをやるならレトロゲームをやりたいというレトロゲーマーとしての思いが詰まっているのだが……今の凛にはレトロゲームを優先する脳はなかった。


疲労している手を伸ばし、VRを機材を頭にかぶせる。

今年の誕生日にもらったゲームへとログインする。


普段はレトロゲームに対して興奮が湧く凛であるが、今は最先端のVRMMOに対して興奮が沸いていた。

何年振りかのVRMMO。それにレトロゲーマーとしてはらしくない情熱を抱き、プレイヤー設定画面に入る。


【phantom kingへようこそ。私は管理人のA。微睡む者よ、アナタの姿は如何にして…】


ネーミングが可哀想過ぎるのは置いておき、プレイヤーのステータスを決める。

種族が色々あるのを見るに、職業も沢山あるだろう。

心臓をワクワクと高ならせつつ、選択を押す。


○人間◀︎

○獣人

○腐肉人




「失敗した…」


種族:人間 jobs黒魔術師 名前:リチャ 

HP(25/25) MP(43/43)

STR:0 VIT:0 INT:35 DEX:3 AGI:15


スキル

・黒魔術Ⅰ


装備

・魔法使いの帽子 ・魔法使いの服

・魔法使いの手袋 ・魔法使いの革靴

・魔法使いの杖


三門凛は徹夜である。もう一度言おう、三門凛は10時間徹夜でゲームをした後にログインしている。

それゆえに、凛の脳はすでに限界に近しいラインへと到達している。

そんな状態でステータス設定をすればどのような事態へとなるのか。


頭の中で思い浮かべていた光景とはかけ離れた光景が展開されるのだ。


始まるフィールドだってそう。第一の街ラグラではなく、彩りの跡地となっている。

第一の街から結構離れてしまっているらしく、初心者がレベリングをするフィールドではないことは明らかだ。


間違えてjobをヒーラーと間違えて黒魔術師にしてしまったことにフィールド。

自分のしたいプレイスタイルとは全く違うものになってしまった…。

そんな事態に陥った際、一般な人間が起こす行動は一つ。


しかし、今の凛は一般な人間ではあらず。

続行というありえない行動を見せていた。


「かなしぃ……うん!切り替えだ切り替え!私は多分スーパーゲーマー!黒魔術師でも行ける行ける!」


気を震わし、手元にある杖を前に向ける。

黒魔術がどれほどの効力を発し、どれほどの魔力を用いなければならないのかは分からない。

しかし、これから楽しそうなゲーマー人生が待ち受けているだろう……それは分かっていた。


「という訳で……ゴブリン!私の黒魔術で地獄に堕ちろォォォ!」

「ぐぇ…?」


色々な作品で雑魚キャラとして登場しているゴブリン。

風の噂ではこのゲームもそれは変わらないらしく、初心者のレベリングとして重宝されているようだ。


とは言っても、このフィールドでゴブリンで楽にレベリングできる者は初心者ではない。

今のトッププレイヤーがもう少し成長したら狩れる……そういう高位なプレイヤーが対象だ。


「ぐぇぇぇ!!」

「わー!来るな来るな!黒魔術!黒魔術!」


ヘイトがこっちに向いてしまったので、凛は走った。すごく走った。

現実世界の数倍くらいのスピードで走った。

敏捷にステータスポイントを振ってて良かったなと心の底から思った。


しかし……ゴブリンは同じくらい速かった。

魔術を打ってもノックバックはなく、それどころか怒りがヒートアップするかのように速度は段々と速くなっている。


ふざけんなと舌打ちが漏れた。


【MPが0になりました。黒魔術は使用不可です。MP以外の代償を用意してください】


「そんなものないよ!アホカス運営!」


ふざけんなと舌打ちが漏れた。


黒魔術師である凛にこれ以上の攻撃手段はなく、残っている選択肢はゴブリンに追いつかれてなぶり殺しにされるか……。


「へ?」


彩りの跡地の先にある崖に落ち、リスポーンするかだ。

どうやら、凛は良い方を選択したようである。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


ブシュッ!


「はぁ……ク・ソ・が!死んでしまったじゃないか!デスペナルティ…悲しいな。でもそれ以上になんだこれ」


獲得したスキルと称号の詳細を探ろうとした凛の指は人間ではあらず、既にアンデットモンスター……スケルトンへと至っていた。


「なんで!?」


【masterシナリオ:幻想の僕と桜の君】

      YES/NO

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る