⑬ヒロインの末路-2-






(え゛っ?俺って電波を嫁にする隠しキャラだったのかよ!?)


 アイドネウスは神であるから他人の思念を読み取ったり、心を読んだり、魂の色でその人の性質を判断したり、転生者か否かを判別する事が出来る。


 故に自分が把握していなかったカサンドラ以外の転生者が、この場に居る事を察したのだ。


 そんなアイドネウスであるが、カサンドラ以外に転生者がリーベンデールに居たという事よりも自分が乙女ゲームの隠しキャラとして登場していた事実にショックを受けていた。


「アイドネウス様はぁ~、あたしを女神にする為にぃ~、来たのですよねぇ~?」


 だったら【神々の酒】をあたしに飲ませて頂戴♡


 お礼にぃ~、カサンドラの心とぉ~・・・何と言ってもぉ~、初めてをあ・げ・る♡


 カルロスに侍りフローラにギロチンが落ちるところを楽しみにしていたカサンドラは脇目も振らず一柱の元に駆け寄ると、ご自慢のAカップな胸を押し付けながらアイドネウスに抱き着く。


 ガタガタ((((;;OдO;lll))))ガタガタ


「な、なぁ、ミストレイン・・・?この仕事が終わったら慰めてくれないか?」


(あ、あのアイドネウスが・・・恐怖で顔が引き攣っている!?)


 ヒロイン、すげぇ!


 血の気の引いた顔でそう言ってきたアイドネウスに何があったのかを聞きたいミストレインであったが、今はヒロインを自称する電波をどうにかするのが先だ。


「え?ええ・・・」


(泣きついてきたアイドネウスに『いい子いい子』をすればいいのかしら?でも、アイドネウスが蒼褪めているという事はヒロインが原因で相当なダメージを受けたのよね?膝枕の方がいいのかしら?)


 慰め方は後で考えればいいと思ったミストレインは、戸惑いながらも返事をした。


「じゃあ・・・さっさと電波を片付けるとするか!」


「アイドネウス様ぁ~?電波ってぇ~、悪役のアストライアーにそっくりなぁ~、あの女の事ですかぁ~?」


 間延びした、楽しそうな色を含んだ声でカサンドラがアイドネウスに尋ねる。


「確かにぃ~、あの女はモブの癖にぃ~、あたしのアイドネウス様にぃ~、平気でタメ口を利いてたんだもん!」


 モブなのに生意気ですよぉ~!


 ねぇ~、アイドネウス様ぁ~♡


 愛するあたしの為にぃ~、早くあの大女を始末して下さいねぇ~


(俺が言っている電波とはテメェの事だよ!脳内お花畑のピンク頭!!しかも、ミストレインを電波呼ばわりしやがって!!)


 ミストレインを侮辱したという事はアイドネウスを侮辱した事を意味する。


(電波を場末の風俗嬢にするよりザクレウス達を使って・・・いや、津波か地震でも起こして大陸そのものを沈めた方が・・・。でも、俺がそれをやるとミストレインは悲しむだろうな)


 無い胸を自分に押し付けながら抱き着いているカサンドラの暴言に対する怒りを抑えつつ、リーベンデールを乙女ゲームの世界と勘違いしているのであれば勘違いさせたままいさせようと、表面上は見る者を魅了せずにはいられない笑みを浮かべたアイドネウスは手品師が何もない所から花束や鳩を出す要領である物──・・・液体が入っているゴブレットを出現させると、それをヒロインの前に差し出す。


 その仕種一つ一つが洗練されているものだったからカサンドラだけではなく、エレクトラ達も思わず見惚れてしまう。


「これを渡すって事はぁ~、アイドネウス様はぁ~、あたしを愛しているって事ですよねぇ~♡」


(あれは・・・神々の酒!?アイドネウス、マジであんたは馬鹿っぽい喋り方をする性格の悪いヒロインを嫁にしちゃうの!?)


 ヒロインからはモブキャラとしか認識されていないマイアがそう思っている事など知らないカサンドラは、アイドネウスからゴブレットを奪い取ると【神々の酒】を一気に飲み干す。


「これであたしも女神の仲間入り~♡」


「テメェのように頭に蛆虫が湧いている顔も性格の悪いブスを、俺が見初める訳ねぇだろうが!!」


 しかも、そのくねくねとした動きと間延びした喋り方は何だ?


 はっきり言って気持ち悪いんだよ!!


 それと、さっきの俺が言っていた電波はミストレインではなく、ヒロインを自称しているド貧乳ピンク頭・・・つまりテメェの事だ!!!


 話の流れでそれが分からないテメェの頭には脳みそではなく綿あめが詰まっていんじゃないのか?


 あぁ?


 アイドネウスに凄まれたカサンドラは思わず身体が竦んでしまう。


「おい。そこの・・・俺の子孫を自称している恋愛スイーツ脳の、名前は何だっけ?俺の子孫でも何でもない貴様なぞどうでもいいから馬鹿皇帝でいいや。馬鹿皇帝、ピンク頭を娼館・・・いや、風俗に売り飛ばせ!!」


 そいつは根っから男好きの淫乱ビッチ・・・下界ではそのような女を阿婆擦れと言ったか?


 ピンク頭は男だったら誰でもいい雌豚だから寧ろ褒美でしかないだろうがな!!


「なっ!?アイドネウス様!天界に住んでいる貴方は知らないでしょうが、カサンドラは誰よりも純粋で優しい心の持ち主です!それこそ、アイドネウス様の隣に居る大女が庇っているフローラよりも!!」


 例え先祖のご命令でもこれだけは従う事が出来ません!!


「そうですよ!私達はカサンドラ妃の言葉で救われたのです!!」


「言うなればカサンドラ妃は我等にとって聖女!」


「そのカサンドラ妃を何故!?」


 ロードライト帝国の主神から馬鹿皇帝呼ばわりされたのもあるが、何より愛しのカサンドラを娼婦ではなく風俗嬢として働かせろという理不尽な命令に対してカルロス達が反論した。


「ピンク頭が聖女?」


 自分が女神になる為だけに他人に濡れ衣を着せるだけではなく、踏み台にしようとする陰険で狡猾な女のどこをどうすれば聖女になるのだろうか?


「さ、流石、恋愛スイーツ脳。わ、笑わせてくれる・・・」


 四人の主張に、アイドネウスは箸が転んでもおかしい年頃の娘のように声を上げて笑い飛ばす。


「は、腹が痛ぇ~・・・」


 笑った事で落ち着きを取り戻したのか、目の端から流れた涙を拭ったアイドネウスは居住まいを正すと話を続ける。


「いいか?テメェ等の婚約者とミストレインの妹は、美貌だけではなく女に必要な教養やマナーを身に付けた立派な淑女だ」


 俺にしてみればピンク頭よりも彼女達の方を聖女と呼ぶに相応しいと思うがな


((((アイドネウス様!!))))


 やはり神様はちゃんと見てくれているのね!!


 ロードライト帝国の主神直々にお褒めの言葉を頂いたフローラ、エレクトラ、アルティミシア、キャロラインは心の中で歓喜の声を上げる。


「だがな、ピンク頭はミストレインの妹達と違ってそういうものが一切身に付いていない。何せ、ピンク頭はリーベンデールここが現実の世界である事に気が付いていない花畑だからな」


 優秀な婚約者やミストレインの妹に劣等感を抱いている恋愛スイーツ脳なお前達は、全てにおいて自分より劣っているピンク頭を側に置きたいんだろ?


 自分が優越感に浸れるという理由だけでな


「「「「!!」」」」


(攻略対象者共・・・マジで下衆なクズ野郎じゃねぇか!)


 図星だったのか、アイドネウスの指摘に顔色を変えた四人にミストレインが心の中で毒づく。






※アイドネウスは、ヒロインが馬鹿っぽい話し方をするのは攻略対象者共を落とす為に敢えてそういう演技をしている事と、リーベンデールをゲームの世界だと思い込んでいる事が分かっているのでカサンドラを花畑と称しています。






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