第7話 歓迎会



 その後、クエストをこなした俺たちは街に帰還していた。


 クエスト達成の報酬をもらうのと、エルシーの冒険者登録のためにギルドによる。



「というわけで、冒険者登録をお願いします」


 受付にて、エルシーの冒険者登録を行った。


 同時に彼女を俺たちのパーティに入ってもらう。

 チーム・レースケの新しいメンバーだ。



「これがわたくしのギルドカード。とっても嬉しいです。ありがとうございます。冒険者にもなったことですし、マスターの剣として、これからもマスターの敵をバッタバッタと切り倒していきますよ」


「期待しているよ」


「わたくしの活躍の際にはきちんと褒めてくださいね?」


「わかってる」


 エルシーの頭をなでると、嬉しそうに目を細めた。






 クエスト達成して、お金もできた。

 今晩はエルシーの歓迎会をやろうと思う。


「エルシーは好物とか、食べてみたいものはある?」


「とくには。マスターの食べたいもので問題ありません」


「我は酒が飲める店がいいぞ」


「じゃあ酒場を探すか」


 というわけで、酒場を探して四人で入った。



「それでは、エルシーの仲間入りを祝して乾杯!」


「「「乾杯!」」」



 俺が音頭を取り、アイナはジュースの入ったコップ、それ以外は酒の入ったコップを掲げて乾杯をする。


 ごくごくとラティカが勢いよく酒を飲み、エルシーはちびちびと酒を口に含んでいた。


「ふむ。お酒ですか。知識としては知っていますが、なんというか……苦いですね」


「苦いのは気に入らぬか?」


「試しにと飲んでみましたが、こういった苦みはわたくしの繊細な舌は受け付けません。ラティカ様に差し上げます」


「よいのか。感謝するぞ、エルシー殿」


 エルシーから酒を受け取ったラティカはそれも飲み干し、さらに店員を呼んでお代わりを要求していた。

 今日もまたたくさん飲むんだろうな。


 エルシーは、代わりにジュースを注文してそれを飲んでいる。


「このリンゴジュースというものは良いですね。甘くて。気に入りました」


「エルシー的には酒よりもそっちの方がお気に入りか」


「ええ。マスターはお酒の方がお好みですか?」


「俺も酒はたしなむ程度だな。そこまで飲むつもりもないよ」


「ではわたくしとマスターは同じというわけですね」


「ん……そうか……?」


 エルシーの言葉に少し違和感を覚えたが、まあスルーすることにした。



「そういえば、エルシーは英人さんのことはどれだけ知っているの?」


 せっかく話をする機会を得たことだし、エルシーの製作者の英人さんについて尋ねる。


「会ったことはないけど知識では知っているって感じらしいけど」


「エイト様については、生年月日や生い立ち、そして一通りの経歴を知識として蓄えています。どこで生まれ育ち、何を作って来たのかというような知識ですね。伝記を読んだのと同じようなものです。客観的な情報はある程度は知っていますが、その人格面まで詳細に知っているわけではありません」


「彼は地球――日本育ちなんだよね?」


「はい。マスターも、同じ日本育ちという認識でよろしいでしょうか?」


「ああ。日本生まれ日本育ちの日本人だよ。それはこの二人も知っている」


「以前にご主人様からお伝えいただきました。異なる世界? といったことの概念は、あまり理解しているとはいいがたいですが……」


「うむ。我も異世界とかまったく理解できなかった」


「それに関しては、まあ深く理解している人もいないと思うからふわっとした考えでいいと思うよ」


 そこらへん追求し始めたら、そもそも世界って何? と考えを巡らせなければいけなくなってしまう。

 そんなものを考えるのははっきり言ってめんどくさい。

 考えたところで大した特になるとも思えないし。


「そして得たスキルが『鑑定』というものですか。Aランクの有用なスキルですが、戦闘系スキルではないので苦労したでしょう。しかしわたくしの見たてでは、マスターは優れた戦闘能力を持っていると思われるのですが……」


「ああ。それについて説明するよ」


 俺はアイナとラティカに目配せして、二人は「うん」とうなずいた。


 その後、こちらの話の内容が漏れないように隠形系の結界を張る。


「実は俺が最初に得たスキルは『一時帰宅』というものなんだ」


「最初……?」


 エルシーに『一時帰宅』の仕様とその効果、そしてそれを用いた俺のスキルの取得方法を説明する。


 地球から異世界にわたるごとにスキルをもらえる。

 そして、『一時帰宅』を用いれば地球の自宅に戻った後にまたこの異世界に戻ってこれる。

 この二つを応用して、『一時帰宅』を用いるたびにスキルをゲットしている。


「まるでバグみたいな方法だけど、このやり方でスキルを増やしているんだ。今日も一つスキルを得られたし」


「どのようなスキルでしょうか?」


「Sランクの『神槍』っていうスキル」


 俺はスキルを発動し、槍をこの場に出現させる。


「ほう。武器を作るスキルですか。わたくしと同じですね」


「だが、エルシー殿のスキルよりも威圧感がある。これは……恐ろしいな」


「ご主人様。こちらはどういった槍なのでしょうか? 普通のものではないことは、一見しただけでもわかるのですが」


 みんなの言う通り、この槍から発せられる強力な威圧感は普通じゃない。

 みんなは実力のある者たちばかりだから耐えることができているが、普通の人ならこの槍を見るだけでも気絶してしまうだろう。

  

「この槍、投げて使うんだけど。槍を投げたら絶対に当たって絶対に相手を即死させるっていう効果があるんだ」


「……それは」


「恐ろしい槍ですね……」


「スキルの説明では、この槍で貫かれたら絶対に死ぬんだってさ。どうやら、再生はできないし、蘇生の魔法を使ってもダメらしい。それどころか、転生とか時間逆行とか、そういったものも捻じ曲げて相手が死ぬんだって」


 例えば、この槍に貫かれた者がなんらかの手段で時間を巻き戻して槍に貫かれたということをなかったことにしても、槍に貫かれた時間になれば自動的に死んでしまうらしい。


 そんな時間逆行ができるの存在がいるのかなんていうのは、俺は知らないけどさ。


 できるとしたら神様くらいなもんじゃないかな?

 神様がいるのかは知らない。



「この槍は明らかにオーバーキルだと思うけどね。まあ相手を絶対に殺す槍として覚えてくれたらいいよ」


 フッと槍を消す。


「ま、こんな槍なんて使わなくても、『剣聖』とか『魔導大帝』とか戦闘系のスキルはたくさんあるから。使う機会なんてないと思う」



「……恐ろしいスキルですね。これがSランクスキル。わたくしの『宝剣』がちゃちなおもちゃに思えてきました。あれ? わたくしってもしかして雑魚?」


 あかん。

 エルシーが自信を喪失しつつある。


「いやいや。エルシーはとっても強いと思うよ。うん。俺がこの世界で出会った人の中でも、かなり上位に入ると思う」


 たぶん、シオンの街で出会った騎士や元騎士たちよりも彼女は強い。


 実力でいうなら、ラティカ≧エルシー>アイナ≧レベッカ=アルフレッド>ボルドといったところかな。



「私もエルシーさんはとってもお強いと思います。ただ、ご主人様がすごすぎるというだけです」


「エルシー殿よ。主殿と共に過ごす中で重要なことを言おう。それは、主殿と自分を比較しないことだ。こと戦闘という面において、主殿は我らが比較する類の存在ではない。山に対して背比べをしているようなものだ。勝ち負けはおろか、比較や嫉妬の土俵にも我らは達していないのだよ」


 「ラティカさんの言う通りです。この世で何か一つ規格外のものがあるとしたら、それはご主人様なんです」


「はは。二人ともずいぶん大げさに言うな。エルシーが委縮するだろ」



「大げさではなくこれが事実なのです……」


 

 アイナがぽつりとつぶやいた。


 俺はその言葉をスルーする。



「わかりました。お二方の言葉通り、マスターと比較するのはやめましょう。そもマスターがどれほど強くとも、わたくしがマスターの剣であるという事実は変わりませんので」


 エルシー的には、自分が「マスターの剣」という自負があればそれでいいらしく、たいして自信を失ってはいなかった。

 

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