第24話 宴会
「悪の領主バークからこのシオンの街が解放されたことを祝して、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
その日の晩。
街の広場には、たくさんの人間が集まっていた。
街の人々で盛大に宴会をすることになり、その場所が広場となったのだ。
最初はレベッカが主催となり、俺たちと一緒にゲイツさんのところの定食屋でも貸し切って宴会をする予定だったのだが。
どこからか宴会するということを聞きつけた人たちが、俺も俺もと宴会に加わることになった。
定食屋に収まりきらない数になったので、ならばもういっそ広場で大々的に宴会を開くことになったのだ。
あれよあれよという間に話が広がっていくのを目の当たりにして、もうどうにでもなれと思った。
まあ、主催は俺じゃないし……。
俺が苦労するわけでもないから別にいいか。
それに、こうして宴会を開くこと自体は別に悪いことじゃない。
ただでさえシオンの街の住民は苦労してきた。
領主であるバークの圧政に苦しむ日々から、ようやく解放されたのだ。
こうして楽しく騒ぐ日があってもいいだろう。
宴会のために、街の飲食店は食べ物を作って出してくれたし、酒屋はたくさんの酒を街の人たちに渡していた。
ゲイツさんも腕によりをかけて料理を作ってふるまってくれていた。
店としては完全に赤字だと思ったが、今回の出費はすべてバークの財産から奪ったものから補填するため、問題はないらしい。
大酒飲みのラティカはさっそくお酒をガブガブ飲んでいる。
たっぷりとお酒を飲めて満足そうだった。
俺はといえば、酒はほどほどにアイナと一緒に飯を食っている。
なかなか美味しい料理がたくさんあって、俺たちもかなり満足していた。
「レースケ殿~~!」
そんな中、この宴会の主催であり先ほど乾杯の音頭をとっていたレベッカが、俺たちの方へとやってきた。
「飲んでいるか!? ん!? 楽しんでいるか!?」
酒を持ちつつ来たレベッカは、そういいながら俺の肩に手を回す。
私服となったレベッカは宴会ということもありかなりラフな格好をしていた。
おまけに俺と肩を組んでくるもんだから、彼女の柔らかいものがむにゅりとあたる。
おお……。
けっこう立派なものをお持ちですね……。
「楽しんでいるか、レースケ殿! たのしんで、いるかぁぁ……!」
レベッカは楽しそうに肩を組んだあとにコップを傾けてグイっと酒を飲む。
かなり出来上がっているなこれ。
「料理もおいしいし、俺は結構楽しんでるよ」
「そうか! それはよかった。まて、でもレースケ殿は全然飲んでないじゃないか。ほ、ほんとは楽しくないんじゃないか……!?」
陽気な様子から一転、不安げにレベッカの声が震える。
「酒はあまり得意じゃないから飲まないだけだよ。というかそっちはだいぶ飲んでいるな……」
「そんなそんな。私はんてまだまだ飲んでりゃいよ」
「めっちゃ飲んでるだろ。ほらもう呂律もまわっていないし……」
「飲んでりゃーい!」
かと思えば、また陽気になる。
テンションの上がり下がりが激しいパターンか。
絡まれながらも適当に相手していると、レベッカがぐすぐすと泣き始めた。
「うう……。すまないな、レースケ殿。ほんとはレースケ殿が手柄を得るはずだったのに……。私が横取りしたみたいになって……。今回の宴会だって、本当はレースケ殿が主演をやるべきだったのに、私がそうなってしまって。私は悪い騎士だ。きししっかくだぁぁぁ!」
ついに大声で泣きだしてしまった。
目立ちたくないから褒章を受け取りたくなかった。
そのためにバークを捕縛したことの功績を彼女に渡したのだが、それを気に病んでいたらしい。
「いや、俺は目立ちたくなかっただけで……。そもそも俺の方から言い出したことなんだから気にしなくていいよ。騎士失格じゃないから。ね」
「ほんとうか? 私はきししっかくじゃないか? りっぱにきししているか?」
「立派だよ。立派」
泣き上戸だとわかったレベッカの頭をなでてる。
「ありがとう。わたしはしあわせだ……」
今度は感動の涙を流している。
ある程度なでていると、泣くのが止まった。
ようやく落ち着いたかに思えたが……。
「れ~すけどのぉ~。わたしときしをやろう~」
またすぐ後に復活して、こんどは俺に抱き着いて甘え始めた。
えっ。
なに。今度はそっちのパターン?
「れ~すけどのなら~。このくにでもいちばんのきしになれるぞ~~。なぁ~~、わたしときしをしようよ~。わたしもれ~すけどのがいれくれたなら、とってもうれしいぞ~~~!」
「すまんな。昼も断ったけど、騎士にはならないぞ」
「だめなのか~~? れ~すけどのといっしょにいたいぞ~」
「うれしいことを言ってくれるね」
酔ったレベッカがめっちゃ可愛いんだけど。
「でもすまんな。騎士にはならないからあきらめてくれ」
「そうか~。ならないか~。ならしょうがないか~。でもじゃあ、わたしをなでなでしてくれ~~。そしたらあきらめよう」
と、ご要望があったので、彼女の言う通りに頭をなでることにした。
完全に酔っぱらったレベッカは俺にしなだれかかり、そんな彼女をなでている今の俺の姿ははたから見れば、なんだかいけないことをしているように見えなくもない。
周りも割かしひどい具合に酔っぱらっていたから、それを見とがめる者は少なかったのが幸いか。
「あ、レベッカさんずるいです!」
「主殿を独り占めにするなぁ!」
と思ったが、酒が苦手で飲んでいないアイナと、ザルであるラティカがその光景に見とがめられた。
べろべろに酔ったレベッカをなだめるのに苦労したし、それを見つけたアイナとラティカが「ずるい!」と言って俺に抱き着いてくるのをなだめるのにはもっと苦労した。
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