第11話 アルフレッドの裏切り


――――三人称視点――――



「悪いな、レベッカ。お前とは何年も一緒にやって来たが、それもこれでおしまいだ」


 アルフレッドが後ろから剣を抜く。



「がはっ――」


 血を吐きながら、剣を抜かれた反動でレベッカが倒れた。


 どさり、という音が響く。



 何が起こった?

 そんなの尋ねるまでもない。

 

 この街にやって来た騎士であるアルフレッドが、レベッカを裏切って後ろから刺したのだ。



「…………」



 街の人々が、その光景に呆気に取られてなにも言えず、動けなかった。

 その場の全員が何も言えず、静まりかえる。



「……え?」


 ふと、誰かがそう声を漏らす。



「えと、どうしたんですか? 騎士様。どうして同じ騎士であるレベッカ様を……」


「こ、これは領主を倒すためのなにかの作戦ですか? それともレベッカ様が実は悪人だったとか?」


 目の前の出来事に混乱しつつも、そうアルフレッドへと質問を投げかける。




「ん? 何言ってんだお前ら」



 街の人の質問に、アルフレッドは心底馬鹿にした顔でそう返答した。


「作戦でもなんでもねえよ。ただ俺がレベッカを刺したってだけ」


「どうして!」


「どうしてもこうしてもねえよ。理由なんて1つ。俺が領主側の人間で、レベッカのことが邪魔だったってだけだ」


 アルフレッドは、はははと笑っている。



「こいつは俺のことを信用していたからな。簡単に後ろから刺せたんだから楽でいいぜ」



「そんな……!」


 アルフレッドの答えを聞いた街の人たちは絶望に顔を歪ませた。


「ど、どうして……! 騎士は人を助けるものじゃないのか!」


「ああ? そんなお題目をまともに守るわけないだろ。俺はただ金払いがいいから騎士やってるだけだ。そ・し・て……ここの領主はそれはたいそう金払いがよくてなあ。ぶっちゃけると賄賂貰ってんの」


「なんだと……! そんな。嘘だ。これは悪い嘘だ」


「嘘じゃねえよ。そもそも俺は最初から領主側だよ。3年前に領主が変わった頃からずっと話ついてんだわ。つーかテメエらおかしいと思わなかったのか? いくら勇者召喚のために忙しくしてるっつっても、王都付近の街の異変を3年も放置するわけねえだろ」



 つまり。

 いまアルフレッドの悪行は、レベッカを刺した件にとどまらずない。

 圧政をしく領主に味方して、彼が捕まらないように取り計らっていたのはアルフレッドだということ。



「そんな……」


「騎士様が、領主側だったなんて」


「これで俺達は救われるはずじゃあ……」


 絶望する住民たちを馬鹿にしてアルフレッドは言う。


「ははっ! 救われるわけねえだろ! 俺に助けてほしけりゃ金払えよ。領主が用意した以上の金をくれれば、お前ら側についてやってもいいぜ? ま、領主の野郎に取られて金なんざまともに残ってないだろうけどなあ!」



 その姿を滑稽と見下し、ははははとアルフレッドは大声で笑った。

 その姿は、騎士などではなく粗野な悪漢そのものであった。



「う……」



 と、倒れ伏したレベッカの方から息が漏れる。



「ん? なんだまだ生きてたのか。腹を刺してやったんだが……。腐っても俺と同じ『剣豪』のスキルをもっているだけあるな。苦しいだろう? 痛むだろう? 今ここで楽にしてやるよ」


 アルフレッドは剣の切っ先をレベッカに向けた。


「あばよ、元相棒。俺の本性にも気づかなかったマヌケちゃん」



 そして大衆に向かって大声で叫ぶ。



「よく見とけ! お前らの希望が打ち砕かれる瞬間をよ!」



 アルフレッドは地面に倒れ伏すレベッカに剣を突き刺そうとして――。




「ぐがぁっ!?」



 一足飛びで駆け寄ったレースケに思い切り殴られた。



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