第5話 VS盗賊



「逃げてって……」


 どうして、と言おうとしたその時、こちらへの殺気を感じた。


 それも1人じゃない。

 大量の人間がいる。



「誰だ? そこにいるな」


「お、気づいたか。単なる間抜けじゃないらしい」


 民家の影から1人の男が出てきた。



「気配を消すのはけっこう自信あったのに。落ち込んじまうぜ」



 出てきた男は剣を持っているガタイのいい男だ。

 その粗暴な雰囲気と手に持った剣からして、カタギの者とは思えない。



「とにかく、逃がすわけにはいかんなぁ。おい、お前ら来い!」



 その言葉を皮切りに、民家からぞろぞろと武器を持った男たちが出てきて俺たちを囲む。



「はっ、ずいぶん個性的な村人どもよの。それで、これがこの村なりの歓迎か?」


 周囲を見ながらラティカが笑う。


「ラティカさん。冗談言ってる場合じゃないですよ」


 言いながら、アイナは腰の剣を抜く。


「一応聞いておくが、さすがにこの村の者じゃないよな?」


 俺は初めに出てきた、彼らの間のリーダー格の男に尋ねた。


「誰だお前たち?」


「俺たちはガルド盗賊団。泣く子も黙る凶悪犯罪者さ。実際、この村のガキどもは黙ってるだろう?」



 リーダー格が言ったその言葉に、周りを囲む盗賊達がゲラゲラと笑う。

 何が面白いんだか。

 


「盗賊がこんな村になんでいるんだよ」


「そんな事情をお前に説明する必要あるか? お前が知ることはただ一つ。これから死ぬってことだよ。この村に寄った男たちは皆殺し、女は俺らのものにする。そういうルールなんでね」


 そう言った後、リーダー格の男は視線をアイナとラティカに向けた。


「おうおう。よさそうな女が二人もいるじゃねえか。しかも両方ともとんでもねえ別嬪だ。最高だぜ」


「ぐへへ……」

「こりゃ大当たりだぁ」

「兄貴、俺もう辛抱溜まんねぇ。さっさとヤッちまおうぜ」



 男達の下卑た視線が向けられて、アイナは嫌悪に顔をゆがめてラティカは眉をひそめた。


「お前ら落ち着け。あとでいくらでも犯せるんだからな。そこの別嬪の女二人、大人しくするんなら傷はつけねえから抵抗すんな。顔や体に傷がついたらヤる時に激萎えだからな。男の方は殺すが、お前も抵抗しないなら楽に死なせてやる。あと、おいそこの」


 リーダー格は俺達の案内をしようとした女性に剣を向ける。


「お前、俺達を裏切ろうとしたよな? 罰としてお前は殺す。お前の家族もだ」


「そ、そんな……! お父さんとお母さんは関係ないじゃないですか!?」


「黙れ。連帯責任だよ。大人しく殺されてろ」

 

「――!」


 女性は悲しみに顔をゆがめた後、涙を流す。


「さて、お前ら二人は俺達の方にこい」


 周りを囲む男のがラティカとアイナの方に手を伸ばして来る。


「触れるな」

「触らないで」


 二人はその手を弾いた。


「我に触れて良いのは主殿だけなのでな。貴殿らのような下賤の輩が触れることは許さん」


「私は身も心もご主人様のものです。他の人が、気やすく私に触ろうとしないで」



「……ということでな。二人はお前らのとこに行くのは断るそうだ」



 二人から愛されてるなと感じる。 

 こんな状況でもそれを嬉しいと思う。



「誰もてめえらの意見なんか聞いてねえんだよぉ!」


そして俺達三人の言葉を聞いたリーダー格は、ブチ切れた。


「おいやっちまえ、てめえらぁ! 女の方はもう構わねえ、この場で犯しちまえ! それを男に見せつけてから殺してやる! 女の方も、抵抗するなら骨の二、三本くらいは折ってもかまわねえ!」


「うおおおおおお!」

「ひゃっはーーーー! 女だあああ!」

「犯す!」

「てめえらが悪いんだぞ。生意気なこと言わなきゃ怪我しないで済んだのによ!」



「……なんなのだ、こ奴らは」


 その様子を見たラティカがドン引きした様子で汗を流した。



「うるせえこのカス女がぁぁぁぁ!」


 盗賊の一人がラティカに手を伸ばして来るが、そんなものに負けるラティカではない。


 右手で軽く拳を放つだけで、盗賊の男は吹き飛んで民家に激突した。


「おお、よく吹き飛んだの」


「ラティカ。周りのものにはあまり被害を与えるな」


「承知した」



 そして、その光景を見た盗賊達はおののいていた。

 

「……な、なんだこの女。まさか、怪力系のスキルをもっているのか?」


 リーダー格もラティカの力に驚いている。


「くそっ。今の力、とんでもねえ。間違いなくCランクはある」


「Cランク? まさか我の力がその程度のランクのスキルと同程度とおもわれるとはな。少し手加減しすぎたか」



 ドラゴンであるラティカはスキルを持っていない。

 だが彼女はドラゴン特有の強力な膂力や通常よりずっと多くの魔力を持っている。


 人間で言えば、AランクからSランクくらいの戦闘系スキルを持った程度の強さはしているだろう。



「ま、貴殿らのような雑魚に本気をだす必要もないがな」


「な、なんだと!?」


「本気を出したら上半身がはじけ飛ぶぞ? それでも良いなら相手してやるが」


「くっ……! ならもう一人の女の方は!」


「やめておけ。アイナ殿も我ほどではないが、かなり強いぞ」



「はああああ!」


 こちらに襲い掛かって来た盗賊を、アイナは剣で撃退していた。


 襲い来る男を全員剣の一閃で斬っている。

 踊るように剣で戦うその美しい姿は、まさに剣姫といったところだ。


 俺も見てばかりではだめだな。

 『神拳』のスキルを使って盗賊達を殴り倒していく。


「な、なんなんだよお前ら! 強すぎる! 俺たちは泣く子も黙る、ガルド盗賊団だぞ!」


「それがどうした?」



 たった数秒の間に、俺達の周りを取り囲んでいた盗賊達は全員倒していた。

 文字通りの秒殺である。


 あとのこっているのは、この男だけだ。



「気を付けてください! そこの男は盗賊団の副首領。Cランクのスキルを持っています!」



 さきの村人の女性からそう助言が聞こえてくる。



「ふうん? Cランクか」


 雑魚じゃん。

 と、そう思えるのは俺達が強すぎるからなのだが。


 俺は20を超えるSランクスキルを持っている。

 アイナはBランクスキルを持ち、ラティカはドラゴンで戦闘力はA~Sランク並み。

 

 こいつが弱いのではなく、俺達が強いのだ。



 王都でも、Cランクスキルをもつゴリアットが実力者扱いされていたし。 

 普通はそれなりに強いと思われるランクなのだろう。



「そ、そうだ。俺はCランクスキルを持っている。おお、お前ら、今なら見逃してやるから――」


「うるせえ、カス」


「ぐごっ」


 こいつがどんなスキルを持っているのかも、別に知る必要はない。

 拳で一発殴ってぶっ飛ばし、それで終わった。


 盗賊達は、死んでいるか気絶している。

 俺とラティカが殴り殺した奴もいるし、アイナが切り殺した奴もいる。


 同情はしないし悪いとも思わない。

 こちらを殺しに来るような奴だ。逆に殺し返したところで正当防衛だろう。



「…………」


 異世界に来て初の殺人に、何か思うところはあるかと思ったが、特にないな。

 この落ち着きぶりは戦闘系スキルの副次効果なのか、あるいは俺が元からそうなのか。

 

 どちらかは知らないが、しかしこれを悪いことだとは思っていない。


 人を殺しに来る悪人がいるような世界だ。

 いつこうやって悪人がおそってくるのかわからない。

 自分の身やアイナとラティカを守るために、こうやって殺しをすることも今後あり得るのだ。

 

 しかしまあ、落ち着いてこそいるが、特にいい気分というわけでもなかった。

 さすがにそこまでイカレてはないし、そうなりたくもない。


 と、殺しについてのことはこのあたりで思考をやめて、切り替えよう。



「さて、そっちの事情を聞きましょうか?」


 死んでいるのは放置。

 気絶した盗賊達は拘束した後、俺は案内してくれた女性に尋ねた。


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