第24話 ギルドに登録


 ようやくギルドへと戻って来た。


「おかえりなさい、レースケさん。今日は遅かったですね?」


 クエストから帰って来た俺たちは受付に行く。

 するとミリアさんが対応してくれた。


「いろいろありまして」


「まさかアイナさんが怪我を?」


「いや怪我はしてませんよ。彼女は強いので」


「では、色々というのはもしかして、その後ろにいる女性のことですか?」


 ミリアさんが指をさした先にいるのはラティカだ。


「はい」


「また奴隷を購入されたんですか?」


「いや違いますよ。買ったんじゃないです」


「じゃあナンパかなにかですか? 女を引っかけるのが上手いですね」


「そんなんでもないですって……」


「なんだ小娘。嫉妬か?」


 ラティカが話をしている俺とミリアさんの元へきて割り込んでくる。


 しかしいきなり小娘呼びとはすごいな……。



「ち、ちがいますよ! そんなんじゃないです!」


「そうか。主殿はモテるからな。貴殿も惚れているのかとおもったよ」


「……そんなんじゃ、ないです」


 小さくミリアさんは呟く。


「まあ我としては貴殿の心持ちはどうでもよい。我はここに冒険者とやらになるために来たのだ」


「あ、冒険者への登録志望の方でしたか」


「ああ。名はラティカ・ゾネリカという」


「では登録いたしますね」


 ミリアさんは書類を取り出して書いていく。


「ラティカは俺達のパーティの中に入れてくれ」


「やっぱりパーティに入れるんですね。自分の女を冒険者にしてパーティに入れるなんていい身分ですねっ!」


「我が主殿の女に見えるか? ふふ、見る目あるな小娘。本音だとするならば目を、世辞だとしたらその口の上手さを誇るが良い」


 ラティカは俺の腕を取り、抱きしめる。


「ギ、ギルド内でイチャイチャしないでください。あと、さっきから気になってましたけど、主殿っていうのはいったい」


「我は主殿に仕えているのでな。奴隷、のようなものだと主殿は言っていた」


「レースケさん! さっき奴隷じゃないって言ってましたよね!」


「奴隷じゃないとは言ってないよ。買ってないといっただけで……」


「買ってないのにどうやって奴隷にしたんですか」


「それは我の方から自主的にそうなるように頼んだのだ。主殿は我を救ってくれたのでな。我がその存在全てを捧げるというのは何もおかしな話ではあるまい?」


「今日の間に何があったのかは知りませんが、だからと言って奴隷になるのは普通ではないですよ。ていうかほんとに何をしたらたった1日でここまでの関係になるんですか? 自主的に奴隷になるって、もう調教してるようなものじゃないですか」


「まだ調教されてはないぞ? それは今夜だと、アイナ殿が言っておった」


「―――!」


 ジロ、とミリアさんがこちらを睨む。


「そう言えば、アイナさんも毒牙にかけたんですよね。次はラティカさんですか」


「ミリアさん。毒牙なんて言わないで下さい」


 アイナが俺の隣にやってきて、ラティカとは反対の方の腕を取り抱き着く。


「ご主人様は昨日も一昨日も、私に幸せを与えてくださいました。女にとっての究極の幸福です」


「もう調教済じゃないですか……!?」


 驚愕したミリアさんがそう叫ぶ。




「この話、まだ続ける?」




 いい加減周りの目がすごいことになってるから、早くおわってほしい。






 その後、ラティカが冒険者として登録され、ギルドカードを取得した。

 そして予定通り、俺のパーティに入ってもらった。


 いまはギルドに併設されている酒場で休憩中だ。


 ギルドカードを見ながらニヤニヤするラティカ。


「これで我も冒険者か。しかもチーム・レースケの一員であるな」


「そのパーティ名。恥ずかしいから早く変えたいんだけどね。あくまで仮の名前だから、なんかいいパーティ名とか思いついたら教えてくれ」


「ご主人様! 私にパーティ名の案があります。実は昨日からずっと考えていたんです」


「おお! さすがはアイナ! 頼りになる!」


「えへへ……」

 

 俺からさっそく褒められて、嬉しそうに目を細めるアイナ。


「で、どんなパーティ名なんだ?」


「はい。『尊きお方レースケ様の覇道』です」


「却下で」


「な、なぜですか!? こんなに素晴らしい名前なのに」


「なんでもなにも、前に却下した偉大なるなんちゃらと同じようなものだからだよ。俺の名前が入ってるのが嫌だし、あと覇道とか尊きとか入ってるのが恥ずかしいんだ」


「ですが、チームにご主人様の名前をいれることによって、それに所属する私たちがご主人様のものであることを実感できるという――」


「なにをわけのわからないことを言ってるんだ」


 この子、ネーミングに関してはちょいちょいおかしくなるな。



「我は悪くないと思うけどな」


「マジで言ってる……?」


 アイナの案を聞いたラティカがなんと同意しだした。

 あれがいいと思ってるの、アイナだけじゃないのかよ。

 嘘だろ。


「しかし少し短い気もしないか?」


「長くする必要ある?」


「あるぞ」


 ラティカは俺の疑問にたいして、頷いて答える。


「名前というのは付けられたものの性質を表すからの。なるほど短くしたならば、いかにも上手くまとまったと感じるやもしれん。しかしそれはまとまると同時に抽象化され、本来そのものの持つ意味や性質が失われていくことと同義だ。短いことが正しいというわけではない」


「それは……確かにそうだな」


 なかなかまともなことを言うじゃないか。


 彼女の言うことは特におかしくない。言われてみればそれもそうだ。

 重要なのはその性質を表すということで、短くすることやまとめることにこだわる必要はない。

 

「むろん、人や動物の名前をむやみやたらと長くすれば呼びにくくなるという弊害もあろうが。しかしパーティ名とやらはある程度は長くしてもよいのだろう? 先の小娘から他のパーティ名を聞いてみたが、アイナ殿の言ったパーティ名よりも長いものはそれなりにあったぞ」


「まあ、じゃあ長さについては別に構わないよ」


「主殿の同意も得たところで、我がアイナの考えたパーティ名を少し改良するならば、『強く優しく高潔である尊きお方レースケ様の栄光に満ちた覇道。そして彼の道行きに同行する者たち』だな」


「うん。却下で」


「なぜ!? こんなに素晴らしい名前なのに!?」


 驚愕するラティカ。

 その反応に俺は驚きだよ。


「いや本質だの意味だの言っていた割には大した情報入ってないし……。あとそもそも、長い短いの問題じゃなくて、そもそも俺の名前に尊いとか覇道とか付け加えたパーティ名が嫌なんだよ」


「では『輝ける者レースケ様の救世』や『完全無欠の主レースケ様の伝説』は……?」


 アイナがおずおずと尋ねる。


「いや全部却下だよ」


「う、うう……。頑張って考えたのに」


「では主殿はどういったパーティ名が好みなのだ?」


「普通の名前だよ。いや、お前らに普通とかいうとまた偉大なレースケ様とか言い出すよな。一語か、二語程度で表せるものがいい。もちろん俺の名前が入っていないものでな」


「ご主人様の名前が入っていないものですか。これは難しくなってきました」


「そんなに難しいかな?」


「はい。私は常にご主人様のことのみを考えていますので、ご主人様の名前が入っていないパーティ名を考えることは難しいのです」


「そっか……。俺のことを考えてくれるのは嬉しいけど、他の物にも目を向けてくれるともっと嬉しいな」


 別に依存してほしいわけじゃない。


 まあ出会って三日目くらいだ。

 まだ頼りになる人が俺くらいしかいないのだから仕方ない一面もある。


 ラティカという俺以外の存在と一緒にいることで、彼女の精神が良い方に向かうといいと思う。



「ひとまず、パーティ名については保留とする。また後で考え付いたら教えてくれ」


「わかりました。ご主人様のパーティにふさわしい、素晴らしい名前を考えておきますね」


「我は別に今のパーティ名でもよいけどな」


「いや後で変えるよ。うん」



 パーティ名は、俺も考えておこう。

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