【書籍化決定】異世界に召喚された時に得た「一時帰宅」というチートスキルを使って1日1回5分だけ地球に帰れるようになった。そしてどうやら地球から異世界に戻るたびにチートスキルは増えるようで……

沖田アラノリ

1章

第1話 異世界召喚、そして追放


 俺の名前は沙城零助。

 日本に住む普通の大学生だ。


 両親が小さい頃に事故でなくなり祖父母の家で育ったが、その祖父母も少し前に亡くなった。

 要は天涯孤独というわけだ。

 

 そんな俺もこの地球を離れることになってしまった。


 死んだわけじゃない。

 異世界に召喚されたのだ。




 大学が休みのある日、俺は部屋でテレビを見ていたら急にめまいがして、気づいたら自分の部屋とは異なる場所にいた。 


 体育館よりかは少し狭い位のおおきな一室。

 豪華な飾りつけがされている。


 ここはどこ?

 なに? 俺は誘拐でもされたの?

 それとも夢か?

 

 そうしてためらっている俺の前には、部屋の飾り付けに勝るとも劣らない豪奢な服を身にまとった初老の男性がいた。



「ようこそ勇者様」



 男性は俺を見て言った。

 周りに立っている人たちも全員俺のことを見ている。


 あ、いまのもしかして俺に言ってた?


 だれが勇者やねん。



「えっと、初めまして」



 とりあえず挨拶から。

 ニコリとコンビニバイトで培った愛想笑いを浮かべる。


「おお。勇者様のお声だ」

「なんと凛々しい」


 周りの人たちが盛り上がっている。

 

「勇者というのはもしかして俺のことですか?」


 真ん中に立つ、一等豪奢な服を着た、王冠をかぶっている人に話しかける。


「いかにも。そなたこそが、我らが召喚した勇者殿だ」


 やっぱり俺のことであっていたらしい。

 誰が勇者やねん。



「ここはメルティナ王国。勇者殿の住む世界とは異なる世界に存在する国だ」


「そ、そうですか。それであなたは?」


「我はメルティナ王国の王、フェルディナンド・メルティナだ」


 王様か……。

 まあ、真ん中にいて王冠をかぶっていることから薄々察しがついていたが。


「先も言った通り、我らメルティナ王家が勇者様を異世界より召喚いたした」



 どうやら、誘拐というのはあながち間違いではなさそうだった。


 なんてことしてくれとんじゃこいつら。






 その後王様とかその周りにいる奴らが色々喋っていたが、まとめるとこんな感じだ。


・ここはメルティナ王国の城で召喚の儀式はここで行った

・勇者召喚は俺が初めてではないらしく、国ではだいたい百年に一度くらいの頻度で定期的に行っている

・勇者はその度に強力な力を発揮して人間と敵対する魔族を倒していた

・そして俺にも同じことをして欲しい


 ということだ。


 この魔族とやらが千年以上も人間と戦っているらしい。

 魔族は強くて全然勝てないから、そのたびに地球から勇者を呼び出して戦ってもらってるんだとか。


 いや自分たちで何とかせえよ。

 自分とこの問題だろ。


 人に頼るな。


 とは思っても、この状況でそんなことを言ったらどうなるのかわからないので黙っておく。



「勇者殿、ぜひ我らと共に悪しき魔族と戦い、この国を、ひいては人類を救ってはくれまいか」


「しかし、俺は平和な国で育ったので、戦う技術は持っていません。かつて召喚されたという勇者たちのように戦うことなんてできません」


 いちおう、戦う力がないことを伝えつつ、なんとか戦わない方向にもっていく。



「ふむ。そのことについては安心してくれ。勇者殿は既に戦う力を持っている」


 はい?

 どういうこと?

 王の言葉が理解できずに首をかしげる。


「この世界に住む者は全てスキルというものを生まれつき持っている。勇者殿の世界ではスキルはないらしいが、なんと世界を渡る時に勇者殿は新しくスキルを授かるのだ。歴代の勇者殿はみなそうだったと聞いておる」


「俺にもそのスキルというものがある、ということですか」


「もちろん」


「いや……しかし。どうやって確認すれば」


「ステータスオープンと唱えてみてくれ。それで勇者殿は自分のスキルを確認できる」


「わかりました。ステータスオープン」



――――――――ステータス―――――――――――

名前 沙城零助

年齢 19歳

スキル 一時帰宅(Eランク)

――――――――――――――――――――――――



 うわ。なんかでた。


 俺の名前と、年齢と、スキル。


 うん?

 この『一時帰宅』ってなに?



「ステータスというのがでました」


「うむ。それは本来は自分にしか確認できないもので、他人である我らからは見ることができない。だが、『鑑定』のスキルを持つ者がいれば他人のステータスを確認できる。おい」


「はっ」


 端から一人の男性が前に出てくる。



「お初にお目にかかります勇者様。私はこの王国に仕える鑑定人と呼ばれるものです。『鑑定』というスキルを使い、他者のステータスを確認することができます」


「勇者殿のステータスを確認しろ。勇者殿、構わないかな?」


「ええまあ。いいですよ」


「では失礼いたします。むむ! これは!?」


 なんだ? 

 なんか大袈裟な反応するな。


 もしかしてこの『一時帰宅』っていうの、すごいスキルだったりする?



「な、なんだ。どのようなスキルが出てきた。それほどの反応ならば、Sランクスキルであることは違いない。もしやSランクの中でも上位のスキルを……」


「いえ、陛下。彼のスキルはSランクではありません。それどころか、Aランクですら……。このスキルはEランクのスキルです」


「な、なに! Eランクだと! 最低ランクのスキルではないか!」


 王様は大声で驚き、周りの大人たちもざわつき始めている。


 穏やかな状態でないことはわかる。

 というか、俺のスキルが何か悪かったというのはなんとなくわかる。



「スキルのランクってなんですか?」


 鑑定人に尋ねる。


「スキルにはそれぞれ有用度ごとにランクが分かれているんですよ。上からS、A、B、C、D、Eです。上のスキルほど強力であったり利便性が高く、下のスキルほど弱く利便性が低いです」


「ということはEランクは」


「ええ。一番下のスキルです。つまりは利便性が低く、大した役には立ちません」


 ええ……まじかよ。

 せっかく異世界に召喚されたってのに、俺のスキルって最低なのか。


「そ、それで、どういうスキルなのだ? 勇者殿のスキルは」


「彼のスキル名は『一時帰宅』。自宅に距離を無視して五分間だけ戻れるというスキルです」


「そ、それだけか? 五分間だけ? もっと他にあるだろう」


「それだけです。五分間家に戻るだけです。五分経てば強制的に元の場所に帰ってきます」


「そ、そうか……。いや待て、勇者殿はこことは異なる世界に住んでいた。ということは、彼らの世界から物を持って帰れるということではないのか? かの世界はこの世界よりもかなり文明が進んでいると聞く。帰宅した際に優れた道具を持ち帰ることができるということだ。ならばかなり有用なスキルと言えよう」


「いえ、陛下。それが、このスキルは物を持っていくことも持って帰ることもできません。五分間だけ帰宅して、その状態のまま帰ってくるというだけです。過去、この国に同様のスキルを持つ者がいました。何度も検証した結果、このスキルは五分帰宅するだけのスキルと判明しています。だからこそEランクなのです」


「何の役にも立たない、Eランクのスキルだと! そ、そんな馬鹿な。ありえない。勇者だぞ! そんな馬鹿なことがあり得てたまるか!」


「あの……どうして王様はあんなに取り乱しているのでしょうか?」

 

 再び鑑定人に尋ねる。



「過去に召喚された勇者様は皆高ランクのスキルを有していたんですよ。大体はSランクのスキル、低い者でもAランクのスキルを持っていました。Eランクというのは過去に類をみないですね。というか、この国のそこら辺の人でももっとましなスキルを持っています」


「マジですか」


 そこら辺の人よりも使えないスキルなのか、俺。

 ま、五分帰宅するだけだからなあ。


 そらそうよな。


「なんで俺だけ低ランクなんですかね」


「そういうこともあるとしか言えません。スキルは個人で選べるものでもないので。ただ単にあなたの運が悪かったのでしょう」


「ええー。つまり俺は運悪く外れスキルを掴んでしまったということ? なんでこう、悪い方にばかり珍しいことが起こるんだ」


 俺、運悪いのかなあ。

 確かにある日突然地球から異世界に召喚される時点でけっこう運悪いな。



「おい貴様ぁ!」


 話していたら、王様が俺に向かって怒鳴りつけてくる。


「有用なスキルを所持し、魔族との戦いに役に立つと思ったから多額の費用を使って貴様を召喚したというのに、なんたることだこの下郎が!」


「そんなことを言われましても。召喚されたのも、低ランクのスキルも、俺の意思じゃありませんし」


 そんな怒鳴られてもなぁ。

 俺の意思が介在していない以上、俺にはどうしようもなくね?


「ええと、役に立つスキルでもないですし、いっそのこと俺が元居た世界に戻していただけると助かるのですが」


「なぜ貴様のような役立たずにそんなことをしなければいけない! 帰りたければ自分のスキルで帰ればいいだろうが! 五分間だけな!」


 王様の台詞にイラっとくる。

 なんだこいつ煽ってんのか?



「ふん。貴様になどもう要はない。さっさと去れ。我が城からでていけぇぇぇぇ!」



 

 王のその一言で、俺は城から追い出された。



 手切れ金とか……あ、ありませんかそうですか。

 

 いきなり呼び出しておいて役に立たないなら手ぶらで追い出すとか。

 最低すぎるだろあいつら。

 

 それとも殺されなかっただけでもマシだとでも言うつもりかね?


 城を追いだされ、俺はとぼとぼと王都を歩く。



「あーしっかし、このあとどうしよっかなー」


 この異世界で、俺は金もなければコネもない。 

 あるのは役に立たないと言われたEランクのスキルだけ。

 このままだとどこかで野垂れ死ぬしかないわけだ。


 生きるために、金を稼がなきゃいけないわけだが。

 このスキルでどうやって金を稼げばいいのかねえ。



「とりあえず使ってみるか。五分間だけの一時帰宅」



 これが現状打破の光明になればいいと期待して、ひとまず使ってみることにした。

 

 せっかく身についたスキルだ。

 使ってみなければ損だし。


 スキルの使用方法はなんとなくわかる。


「スキル『一時帰宅』使用」


 すると、パッと目の前の光景が切り替わる。

 先ほどまで歩いていた王都の町並みは消え、俺は地球にある見慣れた自宅へと戻ってきていた。


「ほんとに戻って来た」


 ひとまず、俺は椅子の上に座り込む。


「はぁー。疲れた。あの短い間に色々起こりすぎだよ。あー、さっきまでのが夢だったらよかったのにな」


 一人呟くが、そんなに人生都合よくはいかない。

 夢だったらよかったのに、と思うことほど夢じゃないのだ。


 自宅で五分経ったら俺は王都へと戻ってきていた。


「やっぱ夢じゃなかったか」


 俺は手のひらを確認する。


 さっき鑑定士は物を持って帰ることはできないと言っていた。

 それを確かめるために、異世界でも使えそうなものを鞄に詰めて手に持っていたのだが、それを持ってくることはできなかったようだ。


「やっぱそう都合よくはいかねえよなー」


 はぁ、とため息をつく。

 そこまで期待していたわけじゃないが、成果なしはさすがに落胆してしまう。

 

「あーあ。もっと使えるスキルがあればな」


 俺はステータスオープンと言い、恨めし気に自分のステータスを見る。



――――――――ステータス―――――――――――

名前 沙城零助

年齢 19歳

スキル 一時帰宅(Eランク)

    神拳(Sランク)

――――――――――――――――――――――――



「まったく。この一時帰宅のスキルがもっと強いスキルだったら……って、ん?」


 俺は自分のステータス画面を――そのスキルのところを注意深く見る。



「スキルが……増えてる?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る