Ⅰ-2

――――――――――

"神の世界"の時間で一時間後...



「…えっと…これをこうして……ふう...。

やっと世界の基ができたな。

後は…ん~…少し放置みたいだな」


本を捲りながら独り言を言っていたエイト。

その隣には不思議な球体がひとつ浮かび上がっていた。

そしてひと段落ついたのか、エイトは本を脇に置き、球体から目を離して寝転がった。


(…あのじじぃ何だよ、こんな分厚い読みにくい分かり難い本渡しやがって。

まず字が汚すぎんだよ。たぶんじじぃが書いたんだろ。

だいたいあのじじぃ偉そうにしすぎ――)


「やあ、18番こんにち――」


「18番って呼ぶんじゃねぇ!!」


「す、すいません...。…て、何で私は謝っているのでしょう?」


「俺は番号で呼ばれんのがいやなんだよ。エイトって呼べ。

…ってお前誰だ?」


ようやくエイトは体を起して声の方に向く。

そこには長身痩身、青髪の男が立っていた。


「…あっ、申し遅れました。私は13番です。

…しかし、名前がある神は珍しいですね」


「いいんだよ。じじぃに言ってあるから」


「じじぃ…とは大長老神様の事ですか?」


「ああ、そうだ。

…なんか他の神も番号で呼ぶのはいやだな...。

……よし!おまえは神Bだ」


「…適当ですね。

あと、私の方が一応先輩ですから敬語を使って欲しいです」


「俺敬語とか嫌いだし。平等主義だからな。

ビーが嫌なら…Βベータはどうだ?」


「……ややこしいですね。

殆どの者には"神"が無くなっただけに見えるかと...」


「……取り敢えずお前はΒベータな」


「…拒否権は――」

「ねぇよ」


「…わかりました...。

……因みにΑ…アルファは誰ですか...」


先程よりテンションが下がった13番…もといΒ。


「ん~?まだあんたとじじぃ以外とあってないいからな...。

ん~と…4番かな」


「…やっぱり数字の形で決めてましたか...。

あと、そんな恐れ多い事やめておいた方がいいですよ...。

4番様はとても恐ろしいお方で――」

「誰が恐ろしいって、13番?」


「ひぃ!!」


不意に後ろから声をかけられ、ビクッと跳びあがるΒ。

そして恐る恐る振り返ると、そこには坊主頭で筋骨隆々の大男が立っていた。


「よ…よよ…4番様!」


「よう、13番。俺様が今日生まれた奴を見に来たら…お前が俺様の陰口を言っているとはな。」


「め、滅相もございません。ただ私は――」

「ふっ、まあいい。それより…そこにいるのが18番か?」


「番号で呼ぶんじゃねぇ。

俺はエイトだ。筋肉達磨」


「なにぃ?」


「ひっ!!エ…エイト…あ…あなたは...」


「……はっはっは!こいつぁ威勢がいいじゃねぇか気に入った!」


そう言いながらエイトの肩をバシバシと叩く4番。


「痛ぇって!」


「おおっと、すまんすまん。

で…お前ら何の話をしていたんだ?」


「…ああ、俺が番号で呼ぶのも呼ばれるのもイヤだから名前をつけてたんだ。

こいつ…これにはΒってつけたんだが、これがΑは誰かって訊いてきて、

4番かなって言ったらあんたが来たんだ」


「"これ"ってモノ扱いですか...」


「そうか。俺様は地獄耳でな、俺様の番号を言われたらそこにすっ飛んで行くからな。

あと…エイトっていったな。

お前だけはΑって呼んでもいいぞ」


「ん?おう」


「じゃあ、とっとと世界創っちまえ。

創ってからが本番みたいなもんだからな。

分からん事があれば13番…おっと、Βにでも訊け。

じゃあな、エイト」


そう告げると4番…もといΑは二人に背を向ける。


「え、もう帰るのかよ」


「生憎、作業の少し途中で来ちまったからな。

まあ…暇ができたら遊びに来てやる。

じゃあな」


Αは振り返らずに軽く手を挙げ、去って行った。


「…おいΒ。Αはいいやつだったじゃねぇか」


「それは…エイトはあの方がお怒りになった所を見ていないから言えるんですよ。

あの方がお怒りになられると…あぁ、恐ろしくて言えません...」


「…ふ~ん。まあいいや。

それより、こっからどうすればいいんだ?」


エイトは傍に浮かぶ自分の球体の世界を指差す。


「そうですね…まずどの位進んでいるのか見せて下さい」


そう言ってΒはその球体を覗き込むように見る。


「……結構…進んでますね...。少なくとも私よりは早いです。

私はここまで進むのに丸一日かかりましたよ」


「それは…っと…この本が読み難く分かり難いからか?」


エイトは重そうに大長老神に貰った分厚い本を掲げて示した。


「そ、そうです!その本の読みにくさと言ったら、そのせいで私は何度も何度もまちが――」


「てめぇの話はいいから説明しやがれ!」


「…はい。エイトは何の世界を創るつもりですか?」


「ん?魔法と科学の世界だ」


「ほう。変わっていますね。

ではまず、生命誕生までは…終わっているので、

次に魔法を使うのに必要になる魔力の基を作って下さい」


「それってどうやって作んだよ」


「その本に書いてあると思いますが、私が説明します。

…と言いたいですが私は作ったことが無いのでうまくできるか...」


「お前は何の世界を創ったんだ?」


「よくぞ聞いてくれました。私が創ったのはし――」


「やっぱりいいや」


「…そうですか...。

ではまず魔法の属性と性質を決めて下さい」


「そっか。じゃあ、あれと、それと...、

基本属性七種類といくつかの特殊属性でいいや。

…で、科学の方はどうしたらいいんだ?」


「はい、知恵ある者たち…この世界なら"人類"ですかね。

技術を与えればいいです。

次にその世界の頂点に属する種族と数の割合を決めてください」


「ん~、人...、人間魔人獣人で...、8:1:1…ってとこかな」


「ほう、ではその種族の信仰対象になる、その世界の中の神や神話を創ってください」


「神を創る?」


「はい。高い知能を持った生物は崇める対象を必要としますから」


「わかったよ。………よし、できた」


「それで…だいたい終わりです。

後は様子を見ながら時間を早送りにするだけです」


「じゃあ、Βはどっか行け。

世界創りに集中するし」


「酷っ。…ではさようなら」

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