第13話 果敢な勇気の心

 その正確な一投、絶対的な技術、そして友への強い信頼の証拠を目の当たりにしたライは、テント内の静けさを破り、天を揺るがすような感嘆の咆哮を上げた。


「ヴォオオオオオオオオオオオオン!!!」


 雄々しい獣の叫びは、サーカスのテント全体に激しく響き渡り、空気を震わせる。それは、課題をクリアしたタケルへの、純粋な称賛の表現だった。

 咆哮が収まると共に、ライは深く頷き、青色の瞳でタケルをしっかりと見つめた。


「見事だ、人間よ! 限られたチャンスの中で、絶対的な集中力と正確な技術、そして友への揺るぎない信頼をもって、三つ目の課題を見事にクリアした! 真の勇気とは、無謀な蛮勇ではなく、冷静な判断と信頼、そして磨かれた技術によってのみ成し遂げられるものだと、お前は見事に示した!」


 ライの言葉が終わるのと同時に、テントの中央に激しい純白の光が発生した。それは、強く、純粋な輝きを放ちながら、ゆっくりと形を成していく。

 光の中から現れたのは、澄み切った白色をした透明なハート形の結晶だった。内側からは、『満ち足りた喜びの心』や『熱く燃える心』の結晶よりも、冷ややかながらも確かな強い力が感じられる。


「それこそが、『果敢な勇気の心』だ」


 ライは、威厳のある声で言った。


「真の勇気を持つ者の心臓に宿る、冷静さと信頼の象徴。それを受け取るが良い」


 『果敢な勇気の心』は、冷ややかな光を仄かに放ちながら、ゆっくりとタケルの前へと舞い降りてきた。

 タケルは、手にしたばかりの温かい結晶を、既にリュックサックに収まっている他の二つと同じように、そっと掌で包み込み、大切に仕舞い込んだ。それぞれの結晶が、かけがえのない記憶と感情を宿しているように感じられ、そのはっきりとした重みが、試練を乗り越えた証のように感じられた。

 ライは、威厳のある顔をイトーヌの方へ向けた。青色の瞳は、小さなグレートピレニーズのぬいぐるみの瞳の奥、その純粋な奥底を覗き込むように、じっと見つめている。


「イトーヌよ」


 ライの低い声には、以前のような恐ろしさはなく、温かいような、そしてどこか悲しいような、不思議な響きが込められていた。


「お前の勇気も、本物だったぞ。試練の間、恐怖に震えながらも、最後までタケルを信じようとしたその心……忘れることなく、これからもその勇気をしっかりと持ち続け、大切な友を守り抜くのだぞ」


 イトーヌは、思いがけないライの温かい言葉と、その瞳の奥に宿る不思議な光に、小さな首をかしげ、きょとんとした純粋な表情を浮かべていた。試練が終わった安堵感と、ライの言葉の意味を完全に理解できていない当惑が、その小さな顔に混ざり合っている。


「……もう一度聞くけど、君は僕の知ってるライではないの?」


 タケルは、かすかな希望を込めて、目の前の威厳のあるホワイトライオンに問いかけた。

 課題を乗り越えた今は、出会った時の少し冷たいけれど温かさも秘めていたライとは、何かが違うような気がしてならなかった。

 しかし、ライはタケルの問いかけに、ただ穏やかな微笑みを返すだけだった。その微笑みは温かくも、どこか神秘的で、タケルの疑問に明確な答えを与えることはなかった。


 ライに深い感謝の念を抱きながら、タケル、イトーヌ、そしてフクロウの三人は、不思議なサーカスのテントを後にした。振り返ると、壮大なテントは、以前のように静かに、しかしどこか思い出を宿したように、夜の空気の中に佇んでいる。ライは、重い幕の奥へと、威厳のある姿を消していった。


 タケルたちの姿が完全に夜の砂漠の中に溶け込んだ後、静まり返ったテントの中から、白い毛並みの小さなホワイトライオンのぬいぐるみが、ひょこっと顔を出した。その首には、金色に輝く小さな鈴が付けられている。


「タケル、イトーヌ……頑張るんだよ」


 ぬいぐるみは、小さな声で低く呟いた。


「ぼくは、ここで大切な思い出を守っているから……」


 ホワイトライオンのぬいぐるみは、タケルたちが歩いていった方向をじっと見つめ続けた。温かい思い出を宿したようなその小さな姿は、短い別れの言葉を残し、再び重いサーカスのテントの暗闇の中へと、静かに消えていった。

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