第6話 二つ目の試練
奇妙な森を三人は進んだ。木々の間から差し込む光はキラキラと強弱を変え、足元の土は場所によって柔らかかったり、乾いていたり、少し湿ったりしていた。イトーヌは相変わらずそこら辺をちょこちょこ走り回り、珍しい形の葉っぱや花に興味を示している。フクロウは高い木の枝に静かに止まり、時折、低い声で周囲の状況について説明してくれた。タケルは周囲を警戒しながらも、一つ目の試練を乗り越えたことで、わずかな自信を胸に歩いていた。
やがて、目の前の木々がだんだん少なくなり、視界が開けてきた。空気は熱気を帯び、足元の土は乾燥した、細かい砂へと変わっていく。見渡す限り、どこまでも続く砂の海――第二の試練の地、砂漠へと到着したのだ。
「わあ……砂だらけんぬ!」
イトーヌは、目の前に広がる砂景色にすごく驚いた様子で、一歩足を砂に踏み入れた。
「熱いけど、なんだかサラサラしてて気持ちいいんぬ!」
フクロウは、近くの岩の上に舞い降り、周囲を静かに見渡した。
「ここが、次の試練の場所か。空気の流れを読むと、何かが隠れているようだ」
タケルも、砂漠の景色をじっと見渡した。照りつける太陽の光が砂に反射して、目が眩むほどだ。遠くには、陽炎のように揺らめく影が見える。しかし、それ以外には、特に目立ったものは見当たらなかった。
「……すにゃ?」
微かな鳴き声が、足元の砂の中から聞こえた。驚いてタケルが足元を見ると、砂の中から、小さな尖った耳とつぶらな瞳がちょこんと現れた。スナネコのぬいぐるみだ。
フクロウはスナネコを見た途端、天高く飛んで行ってしまった。どうやらぬいぐるみと言えど、ネコはフクロウの天敵のようだ。
「スナちゃん?!」
イトーヌが急に叫んだ。
(スナちゃん?)
タケルは一瞬イトーヌが何を言っているのかわからなかったが、イトーヌが喜んで短い尻尾を振り回しているのを見てどういうことか理解した。タケルの家にあったスナネコのぬいぐるみと瓜二つなのだ。そのぬいぐるみの名前はスナ。スナは父親がタケルとぬいぐるみごっこで遊ぶために買ったぬいぐるみだ。
「スナちゃんだよね? こんなところでなにしてるんぬ?」
イトーヌは嬉しそうにスナに駆け寄ろうとした。
「近づくにゃ!」
タケルが静止するよりも早く、スナがびっくりするほど大きな、鋭い声で叫んだ。イトーヌはあまりの声の大きさに驚いて近づくのをやめた。
スナは警戒した様子で、砂の中から完全に姿を現し、小さく体を丸めて、じっとこちらを見ている。
「にゃ……きみは、タケルだにゃ……」
スナの声は、先ほどとは反対に、か細く、少し震えているようだった。怯えているように見える。
「うん、タケルだよ。君はスナだよね? どうしてここにいるの?」
タケルは、できるだけ優しい声でスナに話しかけた。スナは臆病な性格、というのが父さんが考えた設定だった。もしかしたらその設定が生きてるのかもしれないとタケルは考えた。
「僕は……大好きなお父さんを助けるためにここにきたのにゃ。タケルもお父さんを助けたいにゃ?」
スナは怯えながらもはっきりとした声でそう問いかけた。
「うん、絶対に助けたい!」
スナはタケルの目をじっと見つめながら、少し考え込んでいる。
「もしかして、君が二つ目の試練を出してくれるのかい?」
タケルがそう問いかけると、スナはタケルの言葉に小さく頷いた。
「僕は、お父さんを助けるためにこの世界の使者になったんにゃ。タケルがこの砂漠に隠された、『熱く燃える心』を見つけ出すことができれば、次の道が開かれるにゃ」
タケルはスナの言葉から、小さな体に似つかわしくない、強い使命感を感じた。
イトーヌは、そろそろとスナに近づき、小さな声で言った。
「スナちゃん、なんだか昔と違うんぬね。でも、また会えて嬉しいんぬ!」
スナは、イトーヌの優しい言葉に、少し頬を緩めた。
「……ありがとにゃ、イトーヌ。僕も、きみに会えて嬉しいにゃ……」
しかし、その瞳はすぐに厳しさを取り戻し、再びタケルに向けられた。
「『熱く燃える心』……砂の中に隠されているにゃ。簡単には見つからないと思うんにゃ……頑張ってにゃ、タケル」
そう言い残すと、スナは砂の中に姿を消した。後に残されたのは、熱い砂と、決意を新たにしたタケル、そして喜びに満ちたイトーヌ、そして……空から降りてきてタケルの背後で、相変わらず周囲を警戒するフクロウだった。二つ目の試練が、熱い砂漠の中で始まったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます