20xx年5月29日

アオイが目を覚ました時、彼はまるで無重力の空間に浮かんでいるかのような感覚に包まれていた。足元も手元も、まったく触れることができない。周囲は暗闇に包まれ、ただ彼の体が不安定に漂っているだけだった。


「…ここは?」


彼は思わずつぶやき、視線を巡らせる。しかし、空間の中には何もない。ただ、無限の空虚が広がっているだけだった。どこまでも続く空間の中で、アオイは自分がどうしてここにいるのか全く分からなかった。感じるのは、ただひたすらの孤独と、不安定な感覚だけだった。


その時、空間の中で、何かが光を放ち始めた。まるで遠くから、ひとすじの光が引かれるように、彼に向かって伸びてくる。その光は、まるでアオイの意識を呼び寄せるかのように輝いていた。


「これが…繋がりか?」アオイは、自分に問いかけながら、その光に足を踏み入れた。


光が彼を包み込むと、瞬時にして周囲の景色が一変した。空間は歪み、彼が立っていた場所は突然、荒れ果てた都市へと変わっていた。壊れたビル、崩れた道路、焦げ付いた大地—すべてが朽ち果て、死んだ世界が広がっていた。これは、アオイが選んだ「繋がりの未来」の果てなのか?


「これは…繋がりなのか?」アオイは自問自答しながら歩き始めた。その足音が静かな荒廃の中に響く。全てが破壊され、命の息吹が感じられない世界だった。しかし、彼の心には、あの「時の守護者」の言葉が響いていた。


『君が選んだ道には、必ず犠牲が伴う。繋がりを選べば、何かを切り捨てなければならない。その代償を支払う覚悟があるのか?』


「覚悟は決めた…」アオイは呟いた。だが、その覚悟がどれだけ重いものであるのか、今、目の前の光景を見て、アオイは改めて感じていた。


突然、彼の目の前に現れたのは、異形の存在だった。巨大な黒い影が、アオイの前に立ち塞がる。その姿は、まるで時空を越えてきたかのような、歪んだ姿をしていた。その目は、まるで無限の闇を映し出すかのように深く、アオイの存在を見透かすように輝いている。


「君が選んだ道は、容易なものではない。」異形の声は、空間全体を震わせるような響きを持っていた。「この世界に繋がりをもたらすためには、まず断絶を超えなければならない。」


「断絶を…超える?」アオイはその言葉の意味を理解できなかった。


異形は、さらに一歩進み出て言った。「君が『繋がりの未来』を選んだことで、すべての『断絶』が明らかになった。この世界を繋げるためには、破壊と再生、融合と切断を繰り返さなければならない。それが君の選んだ未来の『代償』だ。」


その瞬間、アオイはその意味をようやく悟った。この荒廃した世界を繋げるためには、今あるものを切り捨て、何かを犠牲にするしかない。その犠牲が、どれだけ重いものであっても、選んだ未来を実現するためには乗り越えなければならないのだ。


「君が切り捨てるべきものは何だ?」異形は冷たい目でアオイを見据えた。


アオイはその問いに答えることができなかった。切り捨てるべきもの、それが何であるのか、彼にはまだ分からなかった。だが、どんな犠牲を払おうとも、この未来を繋げるためには決断を下さなければならない。


「お前が示す道が、俺の選ぶ道だ。」アオイはその覚悟を胸に言った。


異形は、アオイの言葉にうなずき、静かに告げた。「では、君の選んだ道を進め。その先には、もう一つの試練が待っている。」


異形は消え去り、アオイは再び目の前の荒廃した世界に目を向けた。彼が選んだ未来は、まだ始まったばかりだ。そして、その道を歩む先には、さらなる選択と試練が待ち受けているのだろう。


彼の選びし「繋がりの未来」、その果てに待つ結末は、まだ誰にも分からない。


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