20xx年5月20日

扉を越えた先に広がっていたのは、想像を超えるような異次元の空間だった。目の前に広がるのは、無限に広がる黒い空間と、それに浮かぶ無数の浮遊する光の点だけ。周囲には何もなかったが、何かしらの力がアオイを引き寄せるように感じられた。


「ここは一体…?」アオイは足を踏み出すごとに、空間が微かに反応しているのを感じ取った。


キイナも後ろからその空間に入り込んだが、彼女の表情は明らかに警戒していた。「気をつけて、アオイ。これは…ただの空間じゃない。」


アオイはその言葉を背中で受け止め、進みながら周囲を観察した。光の点々が、まるで無数の星のように漂っている。その中には、ひとつだけ異常に大きな光があり、それが強烈に引き寄せられるように感じられた。


その光が、まるでアオイに語りかけるかのように、徐々に形を変えていった。最初はただの光の点だったものが、やがて人の姿をとり、その姿が徐々に細部まで明瞭になっていく。


「アオイ…」


その声は、深く低く響き、アオイの心に直接語りかけてきた。その声を聞いた瞬間、アオイの背筋に冷たいものが走った。彼はその声の主を見つめ、恐る恐る問いかけた。


「誰だ…?」


その光が完全に人の形に変わると、それはアオイがかつて見たことのある姿だった。それは、アオイ自身の未来の姿、だがどこか異質なものを感じさせる顔立ちだった。目の奥に宿る深い闇と、死にゆくような絶望的な表情が、アオイの心を締め付けた。


「君は…未来の僕か?」


その声を発した「アオイ未来の姿」は、ゆっくりと手を差し伸べてきた。「そうだ、アオイ。私は君だ。だが、君が選ばなければならないのは、私ではなく、君の未来だ。」


アオイはその言葉を呑み込み、何かを感じ取った。「君は、何を言いたいんだ?」


その未来のアオイはゆっくりと歩み寄りながら答えた。「君は、ただの選択を迫られているわけじゃない。君が選ばなければならないのは、未来を決定づける“答え”だ。だが、それは君一人の力では決して成し得ない。」


その言葉の中に、何か深い意味が込められていることをアオイは感じた。その答えとは一体何なのか、それを知るためには、さらに進まなければならないことを直感的に理解した。


「じゃあ、どうすればいい?どうすれば…未来を変えられる?」


未来のアオイは、暗い笑みを浮かべて言った。「君はもう気づいているだろう。君が手にしているその“鍵”は、すべての運命を変える力を持っている。しかし、その鍵を使うためには、最後の試練を超えなければならない。それが、君の“選択”の最終的な答えとなる。」


その言葉と同時に、空間が揺れ、まるで周囲が崩れるかのような衝撃がアオイを襲った。瞬間的に視界が真っ白になり、意識が遠のきそうになる。


「アオイ、しっかりして!」キイナの声が聞こえ、アオイはやっと現実に引き戻されるように目を開けた。


キイナは心配そうな顔をして、アオイに手を伸ばしていた。「大丈夫?」


「う、うん…大丈夫だ。」アオイは深呼吸をして、震える手を少しだけ落ち着かせた。「でも、今のは一体…?」


キイナは目の前の光景を見つめながら、冷静に言った。「あれは、君が選ぶべき未来を示す“試練”だ。君の中に眠る力を目覚めさせるためには、いくつもの障害を乗り越えなければならない。」


アオイはその言葉を噛みしめ、再び目の前の未来のアオイを見つめた。彼の姿は変わらず、どこか遠くを見つめるようにして立っていた。


「試練…」アオイはその言葉を呟きながら、心の中で何度も決意を固めた。「やるしかない。」


その瞬間、未来のアオイが再び口を開いた。「君が選ぶ道の先に、何が待っているのか、君自身が決めることだ。でも、その決断が、この世界を変えることになる。」


アオイは一歩踏み出し、未来の自分と向き合うために前進した。

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