第4話 くう様
「うわぁぁ!!すごいぃ!!」
てんちゃんの大きな背中は、真っ暗な中、猛スピードで走っていた。しかも、てんちゃんは地面ではなく、空を駆け抜けていた。みさきは、落ちそうという恐怖心と興奮で叫ばずにはいられなかった。
ーさぁ、もう少しで高天原につくよ!ー
そう言い、分厚い雲を駆け抜けたとたん、真っ白な光に包まれた。
「ま、まぶしっ!」
あまりにまぶしすぎて目が開けられないでいると、目的地に着いたのか突然てんちゃんは止まった。ようやく明るさにも慣れてきたので、ゆっくり目を開ける。
するとそこには、てんちゃんとは違う大きな狐がいた。しかもその周りには首に紅と白の縄を付けた白蛇や亀、白虎もいる。あまりの迫力にあっけにとられていると、
ーあ、くうちゃん!!みさきを連れてきたよ!!ほら!!ほめてっ!!ー
と、てんちゃんがくうちゃんに駆け寄って幸せそうに笑う。なるほど、このお狐様がくうちゃんなのか。
くうちゃんは亀や白蛇に何かを言い、亀たちがくうちゃんにお辞儀をして去った後、てんちゃんに近寄った。てんちゃんの背中から見るくうちゃんはものすごく大きくて、てんちゃんとは親子みたいに見える。
「こ、こんにちは…み、みさきです…」
ーうむ、君がみさきだね?さぁ、来なさいー
「あ、あの。」
ーん?なんだね?ー
「くうちゃんって、あなたですよね…?」
ー…!?みさき、なぜそんな呼び方をする。失礼だと思わないのか?……まあいい。次からはくう様とでも呼びなさいー
かなり偉そうな神様だなぁ、なんて思いながらてんちゃんから降りる。くう様とてんちゃんは私が下りたのを確認すると、二人ともパン!と手をたたく。二人同時に、てんちゃんと最初に会った時のような人型になった。
「いきなり呼んでしまってすまない。君に手伝ってもらいたいことがあるんだよ」
人型のくう様は男の子なのだろうけど、顔がきれいすぎるし、声も高くて女の子にも見える。くうちゃんと同様、狐の面をつけていたが、巫女服ではなく、蒼の袴を着ていた。
ついてきなさい、とスタスタと歩いてゆくくう様に、てんちゃんもついていく。
「ほら、ついてこないとおいてくよぉー?」
てんちゃんがこっちを向いてにかっと笑う。みさきは置いていかれないよう、速足でついていった。
少し歩いた先には平安時代にあるような大きなお屋敷がいくつかあった。くう様とてんちゃんはいくつかあるお屋敷の中でも一番大きな屋敷の前で立ち止まった。
「ここがくうちゃんと私たちの働くところよ!」
「へぇ、立派…」
あまりの大きさと、‘‘ここに神様がいる‘‘という実感が、みさきの語彙力を失わせた。
「今日からここで働いてもらうよ。よろしく、みさき。」
そういって少し微笑むくう様。初めて知ったのか、横で驚いて目を真ん丸にするてんちゃん。ただ立っている私。
……え?どういうこと???
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