第二話

 週末、代々木公園。秋の気配が漂う噴水前で、葵は白のワンピースに自作のアクセサリーをつけ、隼人を待っていた。


「葵さん!」


 カメラを肩に下げた隼人が現れる。柔らかな笑顔と知的な雰囲気は、通行人の視線も引き寄せていた。


「今日はありがとう」


「こちらこそ」


 最初は本当にアクセサリーの撮影から始めた。隼人の指示は的確で、撮影に慣れない葵をリラックスさせた。


「次はもう少し自然な雰囲気で」


 木陰のベンチで談笑しながらの撮影。隼人が髪を整えたり、さりげない仕草が重なる。


 その瞬間、スマホのシャッター音。ふとした一枚が、まるで親密な恋人同士のように映っていた。


「この写真、SNSに載せてもいい?」


「もちろん。それが“計画”ですから」


 アップロードされた一枚の写真が、静かに波紋を広げ始めた。



 帰宅後、健一はすでに家にいた。テレビの画面を見つめながらも、思考は別のところにある様子だった。


「撮影、うまくいったのか?」


「ええ。代々木公園でね」


 健一は言葉少なに頷いたが、スマホを手にしてスクロールしている。


「写真家って、若いのか?」


「三十三歳くらいかな。妹さんへのプレゼントにアクセサリーを買ってくれたお客さんよ」


「食事とかも、一緒に?」


「時々ね。今日はカフェで少しお茶しただけ」


 健一の表情に、一瞬だけ不満の色が浮かぶ。すぐに無表情に戻ったが、葵にはその小さな揺れが、はっきりと見えた。

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