第22話

「ミルキィを不安に潰させるわけにはいかないの。それに私は貴方の不安も吸い取れてよ?クロハ」

シルキィは不敵な笑みを浮かべる。

「私の中の不安?」

クロハは眉をひそめた。

「貴方も私が居なくなる事で居場所が無くなると言う勘違いをしている」

シルキィはジッとクロハの黒い瞳を見る。

「私は居なくならないわ。先に居なくなるのは貴方やミルキィよ」

シルキィはそう言うとポンとクロハの肩に手を置いた。

その瞬間クロハは力が抜けてその場に膝を着く。

「魔女ですもの」

シルキィは笑いながら消えた。

クロハは何かを思い詰めた様な表情をしている。

「シルキィ、私には貴女が何をしたいのかがわからない」

クロハは胸を押さえながら言った。

誰からも返事は無い。

あれからどのぐらいの年月が経ったのだろうと言うある日。

フウやホークはサンドライトと言う大きな砂漠の国のカーニバルに遊びに来ていた。

この砂漠の中に二人は住んでいる。

「あのテントの近くにこんな賑やかな国があったんですね」

フウは派手に飾られた飾りを見ながらホークに言った。

「ここの王と王妃もなかなかの変わり者でな。祭りには必ず遊びに来る様にしている。だから今日も来た」

ホークは串焼きを食べながらそうフウに説明する。

サンドライトの王の名はフェーレイラ。

王妃の名はフォーフェリアと言った。

フェーレイラとフォーフェリアは従姉弟同士なのだと言う。

このカーニバルは灼熱の夏を過ごし切れた事を祝う祭りだ。

「入るぞ」

ホークは小さな酒場にフウを連れて入る。

そこには老婆が一人。

「今年も生き抜いたか」

老婆の姿を確認したホークは微笑った。

「お主こそ」

老婆もホークを見て微笑う。

「シャーランと言う見ての通りの婆さんだ」

ホークは老婆をそうフウに紹介した。

フウは目をぱちくりさせている。

「こやつについて行くのはかなりの難儀。覚悟しろ、フウ」

シャーランはフウを見て優しく微笑った。

「はい」

フウは即答する。

「子供はまだか?」

シャーランはホークに聞いた。

「子は神からの授かりもんだと聞く。俺に神とやらが何かを授けると思うか?」

ホークはジョッキに入ったビールを飲みながらシャーランを見て笑う。

「冬を楽しみにしとるよ」

そう言うとシャーランはその場から消えた。

フウは再び目をぱちくりさせる。

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